自民党神奈川県連は11月22日、党本部が松本純・元国家公安委員長の復党を了承したことをめぐり、「強い憤りを感じている」とする茂木敏充・幹事長宛ての抗議文を提出した。県連の土井隆典・幹事長は提出後、「やり方に問題がある。地元を無視した形だ」と憤りをあらわにした。
松本氏は緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブに深夜まで滞在したとの『週刊新潮』の報道を受け、今年2月に離党。先の衆院選では無所属で神奈川1区から出馬したが、有権者の支持を得られず落選した。禊ぎに失敗した形だが、にもかかわらず党があっさりと復党を認めた背景には、松本氏の後ろ盾となっている麻生太郎氏と安倍晋三氏の影響力があると語るのは、自民党関係者だ。
「松本さんは麻生さんの最側近で、麻生さんの盟友である安倍さんとも親しい。麻生さんと安倍さんは他の自民党候補から応援入りの要請がありながら、真っ先に無所属である松本さんの応援に駆けつけました。安倍さんは選挙前の9月には『松本純チャンネル』という松本さんのYouTubeチャンネルに登場し、対談で“純ちゃん頑張れ”と後押ししていた。2人は選挙で禊ぎをさせた上で松本さんを復党させる計画でしたが、落選してもその考えに変わりはなかったようです」
しかし、2人の首相経験者が主導したはずの復党計画に、神奈川県連はNOを突きつけた。先頭に立つ土井幹事長は、小泉純一郎・元首相の秘書を12年務めた後、1999年の統一地方選挙で県議会議員に初当選して以来、県議一筋。神奈川のことは誰よりも詳しいという自負から、首相経験者にも臆するところがない。神奈川県連関係者は語る。
「土井幹事長は先の総裁選に向けて菅義偉・前首相の進退が窮まった際にも、『何とか支えたい気持ちもあるが、目の前の衆院選を勝つにはどうするか考えないといけない』として、『県連としては菅さんを頼むという運動をするつもりは一切ない』と言い切りました。地元の支持すら失ったことが明らかになり、菅さんが総裁選出馬を断念するきっかけとなりました。
今回の行動も、地元・神奈川を思っての、止むに止まれぬ行動でしょう。小泉元首相からケンカの仕方を教わった土井幹事長には、菅さんに進退を突きつけたように、今回も『安倍、麻生何するものぞ』という気概が見えます。いくら相手が総理経験者とはいえ、民意と離れた行動を取っては神奈川県連が危うくなるという懸念が大きいようです」