11月25日に行なわれる明治神宮野球大会(高校の部)の決勝戦は大阪桐蔭(大阪)と広陵(広島)がぶつかるカードとなった。今大会は1年生の強打者が神宮球場に次々とアーチをかけて話題となったが、なかでも鮮烈な印象を残したのが、バッターボックスでの独特なフォームが目をひく九州国際大付(福岡)の4番・佐倉侠史朗だった。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。
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東のリンタロウに対し、西のキョウシロウ──。
明治神宮球場に現れた怪物は、菊池雄星、大谷翔平というメジャーリーガーを輩出した花巻東(岩手)の一塁手・佐々木麟太郎だけではなかった。九州国際大付の4番を任された佐倉侠史朗。彼もまた1年生の大型一塁手である。
182センチ102キロの巨躯も、183センチ117キロの佐々木に見劣りしない存在感で、打撃フォームはオリジナルのものだ。打席に入るや広くスタンスをとり、重心を極端に落としてバットを高々と高く掲げる。そこから日本刀を振り下ろすようにバットを振り抜き、白球をスタンドに叩き込めばゆったりとダイヤモンドを一周する。
「侠史朗」の名の通り、何とも漢気を感じさせる立ち居振る舞いだ。
「フォームが独特とは言われるんですけど、夏の大会で2~3打席立たせてもらって、結果が出なかったんです。そのあとに、監督やコーチと話し合って、低く構えて目線をぶらさず、重心が前に突っ込まないように気をつけると、あのフォームにたどり着きました。これが自分の打ち方だと思って、打撃を磨いていきたい」
明治神宮大会・準決勝の大阪桐蔭戦を前に、佐倉は広陵と戦っていた花巻東が一時、同点に追いついた際の佐々木の3点本塁打を目に焼き付けた。同じ1年生には負けられない。そんな想いも抱えている。
「佐々木君はぜんぜん自分よりもすごいバッターで、ホームラン数もすごい。これまでは佐々木君を意識して、長打にこだわりすぎるところもあったんですけど、今日は相手投手との戦いに集中することができたと思います」