舌の筋肉を鍛え喉の機能を高める(イメージ)
誤嚥性肺炎の危険性がある中高年にとって「喉の衰え」は健康長寿の大敵だ。不慮の事故を避けるためにも、日頃から喉を鍛えるトレーニングが必要だ。「舌」も喉を鍛えるカギとなる。みらいクリニック院長の今井一彰医師が語る。
「ほとんど筋肉でできている舌と喉ぼとけは靭帯でつながっています。両者はほぼ一体化した組織で、高齢になって舌の機能が衰えて位置が下がると、同じように喉ぼとけの位置も下がり、嚥下障害につながります。つまり、舌の筋肉を鍛えれば、喉の機能を高められるということです」
舌が衰えると、食事中にむせたり活舌が悪くなったりする。口を閉じた状態で舌が上顎にくっついていれば正常だが、下の歯の裏についていれば、舌が老化している可能性がある。
舌を鍛える画期的なトレーニングとして知られているのが、今井医師が開発した「あいうべ体操」だ。
やり方はいたって簡単で、口を大きく開き、1秒ずつ「あー」「いー」「うー」「べー」と口の形をつくるだけ。
「最後の『べー』で舌を突き出して、思い切り下に伸ばすことがこの体操のコツです。声を出したほうがやりやすい人はそうして構いませんが、口腔内が乾燥するのでなるべくなら避けたほうが良いでしょう。
望ましいのは、『あいうべ』を1日10回×3セットすること。最初は舌があまり出ませんが、3週間ほどで効果があるはずです。舌の筋肉を鍛えて舌を正しい位置に引き上げると、嚥下障害を防ぐ効果があります」(今井医師)
舌トレと同時に口内環境にも気をつけたい。東京医科大学八王子医療センター呼吸器内科診療科長の寺本信嗣医師が語る。
「喉の機能の劣化を招く大きな要因の一つに、口内の衛生状態が悪いことがあります。清潔に保つために普段から歯みがきなどの口内ケアを怠らないことが大切です。盲点となりやすい舌の汚れは、ケア専用のスポンジなどが商品として売られているので、それを活用するのが良いでしょう」