日本の首都・東京。全国的に見れば、東京は“お金持ちが住む街”というイメージがあるかもしれないが、現実は異なる。東京23区には、恐るべき「地域格差」がある──その実態を詳細な調査・分析をもとに活写したのが、ベストセラーとなっている『東京23区×格差と階級』(中公新書ラクレ)だ。
著者で早稲田大学教授の橋本健二氏は、東京23区を町丁目にまで細分化して所得水準に着目し、地域格差の実相を明らかにした。
「一人当たりの課税対象所得額で比較すると、格差がはっきりします。所得がもっとも高かったのは港区(平均593.5万円、2015年)で、もっとも低かった足立区(156.8万円、同年)の3.79倍と約4倍に達しています。この差は、都道府県別で見た場合の東京都(1位)と沖縄県(47位)の所得差、2.37倍(同年)より大きい」(橋本教授、以下同)
1975年の時点では、トップの千代田区と最下位の足立区の所得水準の差は2.3倍だった。だが、2000年代から都心の中央・港区などが大幅な増加に転じ、その一方で、東部の足立・葛飾・荒川区で低下が始まり、2008年のリーマンショックで足踏みしたものの、再び格差が広がっている。
コロナがこうした23区内の格差拡大に拍車をかけることになる。
橋本教授が今年の1~2月にインターネット調査を実施したところ、2019年と2020年の世帯収入の増減は、「山の手」ではマイナス3.4%に対し、「下町」ではマイナス6%と、約2倍所得が下がったという結果が出た。コロナは下町により大きな打撃を与え、格差拡大を助長したという。
「豊かな地域に住む人は格差拡大を是認し、貧しい地域に住む人は再分配を求めがちです。問題は、富裕層と貧困層が混在せず、住み分けるようになることで、お互いに共感が生まれなくなる。私は以前、工場跡地を大規模開発した高層マンションに住んでいたのですが、地域のお祭りで記念撮影する際に周りに住んでいる旧住民を除いて撮ったり、『税金をたくさん払っているのだから、区の行政サービスを優先的に使わせるべきだ』といった主張をする人を見てきました」