何らかの事情で金融機関からの借金が難しい女性に対しSNSなどで呼びかけ、「ひとときの親密な時間を過ごす」ことと引き換えに金銭を貸し付ける「ひととき融資」が話題になって数年が経つ。2019年には、この方法で複数の女性に法定金利を大幅に超えた金利で貸し付けた男が逮捕される事件も発生した。そしていま、被害者がさらに被害に遭う事態がすすんでいる。ライターの森鷹久氏が、「ひととき融資」のその後についてレポートする。
* * *
無届けの者がSNSなどを使い、10万円程度の違法な融資を行う「ひととき融資」が話題になったのは、コロナ禍前のことだった。
Twitterで「お金がない」などと呟けば、善意の一般人のように見えるアカウントが「お金貸せますよ」と返信してきたり、借りたい側が貸付をすると公言しているアカウントに直接連絡を試みるパターンもある。どのアカウントも個人のふりをしているが、法律を守るつもりなどない組織の一端であることは明らかで、反社会勢力による闇業者である可能性が高い。こういったアカウントを経由して金を借りることは危険であるし、たとえそのとき犯罪に巻き込まれなくてもリスクが大きいことだと、関係当局による注意喚起などもなされた。
「ひととき融資」をもちかけるアカウントから金を借りる際には、顔写真と免許証などの身分証明書の画像を送るように要求されるのが常だ。そして、10万円を借りたとしても、実際に送金されるのは7万円など若干少ない額で、あとの3万円は「利息」名目であらかじめ引かれている。たとえ、金を貸した側が「個人的な取引」と言い張っても法定金利を大幅に上回っているので、法律違反に他ならない。その後、当局などからの注意喚起や、逮捕などの報道が続いたこともあって、「ひととき融資」は以前ほど派手な動きはなくなったように見えている。だが、貸付側は、そんなことでひるむような者たちではなかった。ひひとき融資界隈に起きた異変について、取材をした大手紙社会部記者が解説する。
「SNSに『人探し』とか『誰々を探している』という文言とともに、ひととき融資で金を借りた女性たち、つまり債務者の顔写真や身分証の画像が出回ったんです。要は、金を返さないから写真や情報をばら撒いた、ということなのでしょうが、やり方があまりにもひどい」(大手紙社会部記者)
嫌がらせにしても度を超している。普通ならば、そこでSNS運営側に削除申請をしたり警察などへ相談するのだろうが、そもそも借りた側も違法性も含めて後ろ暗いという前提があるためか、被害者側から声が上がることはほとんどなかった。なかには訴えたいと司法機関に助けを求めた人もいたというが、「ひととき融資」の貸金側も、それなりの対策をとっていたという。
「SNSのアカウントは第三者から購入したものだったり、SNSにアクセスする際に身元をわかりにくくするソフトを使っていました。訴えたところで捜査が難航することは分かっていますし、当局も動きにくかったんです」(大手紙社会部記者)