中国の女子テニス選手の彭帥さんがSNS上で、中国共産党の最高指導部メンバーだった張高麗・前副首相に性的関係を強要されたと告発した騒動が波紋を広げている。
11月2日深夜の投稿は30分後に削除され、その後、彭帥さんは安否不明に。21日になって、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長がテレビ電話で会談したことなどが発表されたが、本当に“自由の身”なのかが懸念されている。
習近平・国家主席の指導体制に不都合な情報を告発したから、投稿がすぐに削除されたとの見方もあったが、中国問題に詳しい評論家の石平氏は、「むしろ投稿が30分もネット上に存在したことから、中国当局が意図的に情報を拡散させたことが窺えます」と指摘する。
「今回、告発されたのは“チャイナセブン”と呼ばれる党政治局常務委員だった元最高幹部です。本当に不都合な情報なら、中国当局のネット検閲能力からすれば1分と経たずにすぐに削除され、跡形もなく消去されるはず」
元最高幹部の醜聞を中国政府があえて広めたとする見方だが、一体なぜそんなことが考えられるのか。石氏が続ける。
「告発があったのは第19期中央委員会第6回総会(6中総会)の直前だった。6中総会は、習近平の地位を確固たるものとし、“終身統治”へとつなげる『歴史決議』が採択される重要な政治イベントだった。そのため、反対派を黙らせる必要がある。告発された張高麗は元国家主席・江沢民の系譜で、習一派と対立関係にある“上海閥”の人物。『歴史決議』の採択前に、対立派閥の醜聞を出し、“邪魔するな”と警告を発したのではないか」