また、日本では子供を注意する際に、よく「他人に迷惑をかけるから」というフレーズを使うが、ドイツではルールを守ることは注意するものの、他者を優先する物言いはしないのだという。
「子供がやったことに対して、親が良いか悪いかという判断をするのではなく、どうしてそのようにしたのかを聞いたり、説明させたりすることで、必ず子供の気持ちを優先します。人に危害を加えたり、子供に危険が差し迫ったりしていない限り、親や大人は、決して上から『ダメ出し』をしないのです」
小学1年生から「プレゼン」の授業がある
さらに、ドイツでの教育で自己肯定感を高めることに寄与しているのが、「プレゼン」の時間だという。
「幼児教育の中でも、月曜日には『週末に何をしたのか一人ずつ話す』ための時間が設けられていました。家族でどこへ出かけた、おばあちゃんが遊びに来たなど、たくさん話せる子もいれば、まったく話さない子もいます。でも、これを3年間繰り返していくうちに、小学生になったころには、多くの子供たちが、自分の言葉で主張することができるようになっていくのです。
さらに、小学1年生からは『プレゼンテーション』の時間があります。プレゼンテーションの時間では、先生がテーマを決め、その中から自分が好きなものを選び、自分で調べ、考え、後日その成果を発表し合います。
こうして、小さい頃から自分の主張をしていくこと、相手の意見に左右されないことなど、繰り返し練習していれば、精神的にも強くなり、他人の意見を鵜呑みにすることもありません。こうして大学に進んで社会人となったドイツ人は、子供の時から自主的に考え、自分の意見を持ち、相手に伝え、意見を交わす経験を積んでいるので、世界のいかなる場や会議でも、物怖じすることなく堂々と自信を持って意見を主張できるのです。
『自分で考える』『考えを主張する』ことに慣れていくと、自然と自分に自信が持てるようになれます。それが、自己肯定感の高さにつながっているのです」
人はそれぞれに個性があり、得意不得意がある。全員一律の教育ではなく、子供たち一人ひとりに合った教育が必要だろう。“EU(欧州連合)の優等生”ドイツの子育ては、その参考となるのではないか。
◆参考文献
『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』(キューリング恵美子著・小学館新書)
『自己肯定感の教科書』(中島輝著・SBクリエイティブ刊)