11月22日に緊急会見を開いた東京都議の木下富美子氏が、ようやく辞職を表明した。7月の東京都議選中に無免許運転で人身事故(道路交通法違反で在宅起訴)を起こしたことなどを公表せずに再選され、都議会から2度の辞職勧告決議を受けるも、約4か月ぶりに登庁した9日には議員続行を宣言。3か月分の議員報酬約192万円を寄付し、政務活動費(政活費)150万円は請求しないと語った木下氏だが、12月1日時点まで在職していれば約205万円の冬のボーナス(期末手当)が満額支給されるところだった。
大批判を浴びてもなお、都議の座にしがみつこうとした背景には、他国に類を見ない地方議員特有のうまみがあったからではないのか。
総務省の「地方公務員給与の実態(令和2年4月1日地方公務員給与実態調査結果)」によると、都道府県、市、特別区、町村の議員報酬は、定数3万2860人に対して月額で総額132億3109万6509円支払っている。年間では1587億735万8108円だ。
都道府県議の平均給料(月額)をみると、全国1位は愛知県議(97万7000円)、2位は神奈川県議(97万円)、3位は京都府議(96万円)と続く。東京都議は20位(81万7600円)のため、日本の首都である東京よりも高い報酬の地方議員がいるということになる。
全国市議会議長会の調査結果(令和2年12月31日現在)によると、市議の報酬月額の首位は神奈川県横浜市(95万3000円)、2位は兵庫県神戸市(93万円)、3位は福岡県福岡市と北九州市(88万円)。東京特別区議員では1位は江戸川区(62万1000円)、2位は千代田区と葛飾区(61万8000円)、となっている。
「濡れ手で粟の商売」
“年収1000万超え”がザラにいる上、地方議員には報酬に加えてボーナスに当たる期末手当、“第2の給料”と呼ばれる「政務活動費」も自治体によって額は異なるが支給される。地方行政を取材してきたジャーナリストの若林亜紀氏が語る。
「東京都議は議員報酬に期末手当を加えて年収は約1400万円。それに月50万円の政活費や、党からの交付金を配分される議員もいます。ただ、自治体によっては年俸500万円程度のところもあり、額の差が大きいという実態があります。
地方議員は非常勤の特別職の公務員という身分のため、普通の会社でたとえると“外部顧問”のような存在です。国会議員と比べても登庁日が少なく、市区議会の年間の会期は平均8.4日、町村議会は平均42.6日で、濡れ手で粟の商売とも揶揄されます。そうした体質が影響したのか、多くの自治体で政活費の不正受給が発覚しています」