日本における刃物の三大産地のひとつ、大阪・堺に世界への輸出が5割にも上る青木刃物製作所がある。ここはひとつひとつ職人の手作業によってつくられる「打刃物」を得意とし、その料理包丁「堺孝行」の品質の高さは世界にも広く認められ、有名シェフも愛用しているという。
「アジアを中心に中国や香港、ここ数年は欧米からの注文も増えて、いまでは約40か国へ輸出しています」(青木刃物製作所専務・青木俊和さん)
包丁の材料となる鉄や鋼を鍛造する鍛冶師の土井逸夫さん(68才)は、この道44年。
「海外で日本食が認知されるにつれて、和包丁の需要が高まり、いまでは国内より海外が“主流”になりつつあります。私たちはすべて手作りなので、それが海外で喜ばれ、認めていただけているのかと思いますね」(土井さん)
炎の燃え盛る窯の中、熟練の感覚で火力をコントロールしながら鋼の色合いを見る。
「工程の中で特に集中するのは最初の刃金付けと最後の焼き入れ。焼き入れは炎の色をしっかり見たいので、日が昇る前から作業を始めます」(土井さん)
鍛造の次の、研ぎを務めるのが伝統工芸士の山塚光雄さん(66才)。
「土井さんが作ったものの形を整えて磨き上げるのがぼくらの仕事。毎日研いでいるので、砥石のどこにどう刃が当たっているかは、勘でわかるんです」(山塚さん)
職人の手を渡りながら造られる包丁は1日に数十本しか製造できないため、購入は1年以上待ちの状態。近い将来、海外への輸出数が日本の販売数を超えるかもしれない。
撮影/田中智久
※女性セブン2021年12月9日号