歳をとると身体にさまざまな不調が現われる。中年を過ぎた男性なら、「最近、物忘れがひどい」「家族から『怒りっぽくなった』と言われる」という人も多いだろう。
「歳のせい」と言ってしまえばそれまでだが、実は、それらは加齢だけが原因とは限らない。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師が言う。
「日頃から飲み続けている薬の『副作用』で身体に異変が起きている可能性が考えられます」
薬によっては、副作用で「認知機能障害」を招く可能性があるという。『週刊ポスト』は、医薬品類の承認審査や安全対策を担うPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のホームページで公開されている医療用医薬品の添付文書を検証し、「認知症」の副作用が記載された主な薬をリストアップした。銀座薬局代表の薬剤師・長澤育弘氏が語る。
「認知機能の低下が薬の副作用によるものか、それ以外の理由によるものかの判断は非常に難しいですが、例えば、アセチルコリンという伝達物質の働きを抑えることで頻尿や尿失禁を改善する抗コリン薬の場合、膀胱だけでなく、脳内の神経伝達にも作用した結果、認知機能に影響を及ぼすという可能性は否定できません」
2018年に英医学誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された論文では、抗コリン薬の使用が将来の認知症発症に強く関連するとの調査結果が報告されている。
またアルツハイマー型認知症治療薬のレミニールは、副作用に〈アルツハイマー型認知症の悪化〉が頻度1%未満ながら記載されており、効果と正反対の副作用がある。
「この場合、服用を止めても認知症は進行します。薬のせいで病状が悪化したと判断するのはとても難しいでしょう。よほど気になる場合は、医師に相談してもいい」(同前)