芝とダートでは適性が異なる、のが通説。芝GIを勝った当代きってのアイドルホースのダートGI挑戦は吉と出るのか凶と出るのか。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
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桜花賞馬ソダシが初めてのダート挑戦。血統的にはむしろダートでこそと思われ、陣営でも「いつかはダートを」と目論んでいたという。札幌記念で芝のGⅠ古馬を撃破しているが、さてダートGⅠ級古馬が相手ではどうなのか。
これまでチャンピオンズカップに出走した3歳馬はジャパンカップダート(JCD)時代も含めると49頭で5勝2着2回3着3回。斤量差1キロにもかかわらず3歳馬も健闘している。
クロフネ、カネヒキリなどが3歳で勝ち切っている一方、アドマイヤドン、ゴールドアリュール、ホッコータルマエ、ゴールドドリーム、オメガパフュームなど、その後ダート戦線の主役を張る強者も、3歳時にはこのレースで敗れている。やはり経験がモノを言うレースなのだ。
3歳牝馬の出走は2頭だけで、第1回のJCDに出走したプリエミネンス(当時4歳)が4着。2009年のラヴェリータが13着。両馬とも芝でデビューしながら春にはダート転向、ともに川崎の関東オークスを勝っていた。ラヴェリータは翌年も出走、同じ勝負服のトランセンドを追走、直線半ばまで食い下がりコンマ6秒差の7着に粘った。やはり経験を積んで逞しくなったのだ。
ソダシはすでにGⅠを2勝、母系はダートが得意ということで戦績と血統は問題なさそうに思えるが、昨年引退した角居勝彦元調教師が著書『さらば愛しき競馬』(小学館新書)のなかでこう述べている。
《芝での軽い走りに慣れてしまった馬は、砂の上でもやはり軽く走ろうとするので上滑りしがちです。》
美しい白毛ということでレースではとりわけ目立ち、膨張色だからか(?)力感溢れていてパワーも十分という印象だが、桜花賞ではグランアレグリアを1秒6も上回る1分31秒1のレコードで駆け抜けている。当日は好時計が続出する馬場ではあったが、ダート向きの走法では出せない時計ではないか。
角居師は《プラス相対的な理由》として《ダート路線をずっと走ってきた馬はしぶとく強くなっている》とも指摘。JC2着もあった自厩舎のデニムアンドルビーやラストインパクトにダートを走らせてみたものの、まるで勝負にならなかったことを例に挙げている。
これまで芝、ダートの両方でGⅠを勝ったのは5頭。クロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドン、モズアスコット。しかし初ダートでGⅠを勝った馬は1頭もいない。
ソダシはそのうちの1頭、クロフネ産駒ということでダート適性ありと言われているが、クロフネ産駒はチャンピオンズカップもフェブラリーSも未勝利。3着以内にはいったのは2017年のテイエムジンソクだけ。総数ではダート勝利の方が多いのだが、中央GIクラスとなるとホエールキャプチャ、アエロリット、カレンチャン、スリープレスナイトなど、むしろ産駒は芝のスピードタイプが目立つ。