東京都心の新築マンションの価格上昇が止まらない。月によっては平均1億円を超えることもあるが、それでも契約率は高い水準を維持して売れている。好調な売れ行きを支えているのが、夫婦ともに高収入のパワーカップルといわれるが、そこには大きな落とし穴が潜んでいる。住宅評論家の山下和之氏がレポートする。
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民間調査機関の不動産経済研究所の調査によると、2021年1月から10月までの首都圏新築マンションの平均価格は6565万円。10月としては過去最高だったバブルのピーク時の6123万円を大きく上回っており、2021年1年間の平均が過去最高を更新するのは間違いない。とんでもない価格上昇だ。
それでも売り出した月に何%が売れたかを示す月間契約率は、コンスタントに70%前後で推移し、70%を上回る月もある。
新築マンションの多くは完成前に売り出される、いわゆる“青田売り”だから、初月に70%売れれば、竣工までにはまず完売できる見込みが立つ。そのため、70%が好不調のボーダーラインといわれるが、これだけ値段が高くなっても、そのボーダーライン前後か、それを上回っているのだから、驚いてしまう。
23区の新築マンション平均価格は「1億円超え」も
この価格上昇を牽引しているが、都心部を中心とする東京23区の新築マンションであるのはいうまでもない。
やはり不動産経済研究所のデータによると、2021年度上半期(4月~9月)の首都圏新築マンションの平均価格が6702万円に対して、東京23区の平均は8686万円に達している(別掲図1参照)。
月単位の平均価格をみると、4月は1億180万円、8月には1億812万円と1億円を突破したこともある。それでも、4月は首都圏平均の契約率73.6%に対して、東京23区は76.6%と首都圏平均を上回るほどに売れた。8月も首都圏平均73.0%に対して、東京23区は72.5%だから、堅調に売れたことが分かる。
かつてのバブル時には誰もが将来の収入アップに疑いを持たなかったが、現在はパンデミックから完全には抜け出せない先行きへの不安感が強い。そんな環境で、いったいどんな人たちが買っているのだろうか。