【著者インタビュー】まさきとしかさん/『彼女が最後に見たものは』/小学館文庫/858円
【本の内容】
24万部を超えるベストセラーになった前作『あの日、君は何をした』は、最愛の息子が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことで生活が一変した主婦が狂気に囚われていく心情や、15年後に起きた殺人事件を発端に、刑事が2つの事件をつなぐ鍵を掴み、衝撃の真実が明らかになる鮮やかなどんでん返しが話題になった。本作は、前作で活躍した三ツ矢&田所刑事シリーズの第2弾。一面的ではない人間の表と裏を抉り、いつまでも余韻が残る深い読後感は、本作でも。文庫書き下ろしで12月7日発売。
死に方だけで人生の幸不幸を決めつけることはできない
クリスマスイブの夜、東京・高田馬場の空きビルで、ホームレスと思われる女性の遺体が発見される。
24万部突破のベストセラーになった『あの日、君は何をした』でコンビを組んだ、警視庁捜査一課の三ツ矢秀平と、戸塚署の田所岳斗が、『彼女が最後に見たものは』にも登場、都会の片隅で命を落とした孤独な女性の死の真相に迫る。
タイトルがすばらしい。最初に見たときと、ラストにたどりついたときとで、受ける印象がまったく異なってくる。
「ふだんはすごく悩んで、なかなかタイトルが決まらないことが多いんですけど、今回は珍しく、書き始める前にすんなり決まりました」(まさきとしかさん・以下同)
女性ホームレスの殺人事件というと、渋谷区で昨年起きた事件を想起させるが、まさきさんが小説の核になるイメージを担当編集者に伝えたのは事件が起きる前で、『あの日、君は何をした』を書く前の、初めての打ち合わせの席だった。
「書きたいイメージを聞かれ、雑草の生えた川べりに、ホームレス風の女性が行き倒れている光景の話をしたんです。はたから見れば、住む場所も頼れる人もいない、かわいそうな人生かもしれないけど、彼女がどういう人生を送ってきたかは彼女にしかわからない。死に方だけで彼女の人生を決めつけることはできないんじゃないか、という話をしたんですね。そのときはイメージを物語にすることはできず別の話にしたんですが、続篇を相談していて、『あの光景を覚えているんです』と編集者に言われ、改めて物語にしてみようと思いました。だから、その後で渋谷区の事件が起きたときは本当にびっくりしました」