一般の女性なら、結婚生活や子育てのストレスは、気の置けない近所の主婦、学生時代からの友人などとおしゃべりをしたりして解消するものだが、あれだけ芸能界で騒がれた当時の百恵さんにはそれができなかった。そんな彼女の心の隙間を埋めたのが「キルト」の世界。キルトの針に糸を通して34年。これは百恵さんのキルトへの恩返しの物語──。
この日、東京・国立市内にある画廊「G」には、入場の順番を待つ長い列ができていた。行列の先にあったのは、キルト教室「キルトおぶはーと」の毎年恒例のキルト展。多くの人でにぎわう会場の中央に、ひときわ視線を集める作品があった。「Caressant un reve(夢を灯す)」と題された、三浦百恵さん(62才)の作品だ。
だが、会場を訪れたファンからは「あれっ、どこかで見たことがある気がする……」という声がチラホラ。実はこの作品、百恵さんが2011年から2012年にかけて制作したものなのだ。キルトの大作となると完成までに数年かかる場合もあり、毎年新作を出せるわけではない。それでも百恵さんはこれまで、1年に1度のペースで大作を発表してきた。
「今年1月の日本最大級のキルト展『東京国際キルトフェスティバル』もコロナの影響で中止になってしまいました。なので、この展示会では何か新作が見られると思っていたのですが……」(訪れた50代の女性ファン)
百恵さんにいったい何があったのか──。
いまや百恵さんの代名詞にもなっているキルト。彼女がキルトに出合ったのは、三浦友和(69才)との結婚後に友達からプレゼントされたおくるみがきっかけだったという。
「本格的に始めたのは、次男を出産した3年後の1987年。いまのご自宅に引っ越してから、キルト専門店をのぞくようになったのが始まりでした。ちょうど“何か家の中で楽しめる趣味を”と思っていた矢先で、ご縁というかタイミングが合ったのでしょうね。それから34年。彼女はもうプロの腕前です」(三浦家の知人)
小さな布を縫い合わせていくため、非常に手間のかかるキルト作り。ミシンを使う人もいるが、百恵さんの場合はすべて手仕事で、一針、一針、丁寧に進めていく。子供たちには学校で使うスクールバッグを手作りし、友和の母には、手提げ袋をプレゼントしたこともある。2002年には12年前に60才の若さで他界した最愛の母・正子さんの形見の着物を使い、『ぬくもり』と題した縦180cm、横218cmの大作を作り、展示会に出品した。
また、家族旅行で訪れたグアムで見たイルカをモチーフにした作品など、自分の近況や思いを伝えるものも多い。