「とりあえず薬を出しましょう」。不調を感じて病院を受診した際に、多くの人がそう言われた経験を持つのではないか。このような“とりあえず”の処方には注意が必要だ。国際医療福祉大学病院内科学・予防医学センター教授の一石英一郎医師が言う。
「薬には、現在の症状を改善し緩和する効能などのメリットと、新たな症状が生じる副作用のデメリットが必ず存在します。その両方を天秤にかけ、患者にとってのベネフィット(利益)が副作用のリスクに勝る時だけ、薬は飲まれるべきで、服用を始める際には慎重な検討が必要です」
厚労省によると、75歳以上の4割以上が「5種類以上」の薬を飲んでおり(2020年)、加齢により薬の代謝などの機能が衰え、体内に留まりやすくなる高齢者ほど多くの薬を飲んでいる現実がある。
こうした「多剤併用」は身体への負担が大きいため、「薬を減らしたい」という人は多いだろう。だが、患者自身の判断で安易にやめる薬を決めるのは、現在の症状の悪化を招きかねず危険だ。
そこで普段、患者に薬を処方する立場にある名医に、「飲みたくない薬」「飲まない薬」を聞いた。
薬を替えて気づいた降圧剤の「苦味」
川崎医科大学附属病院病院長の永井敦医師は持病に高血圧があり、降圧剤のカルシウム拮抗薬(アムロジピンOD)を飲んでいる。
「もともとは日本製ジェネリック薬を飲んでいましたが、2020年に相次いで発覚したジェネリック製造会社の不正問題を受けて、海外製の(先発薬と原薬や添加物、製造方法などが同じ)オーソライズドジェネリック薬に切り替えました。
するとまったく苦味を感じず、飲みやすかった。唾液で溶かすOD錠は苦味があるとものすごくつらい。服用後に食事をしてもまだ苦味が残っていた日本製ジェネリックはもう飲みたくないですね。苦味を感じなくなるだけで薬への抵抗感が消え、QOLが改善します」