一方、2023年度に初回の打ち上げを目指すZEROでは、将来的な量産化後に年数十回の打ち上げの実現を想定している。
「私たちはZEROによって、これまでは10年かかっていた宇宙での様々な実証実験を、1年もあればできるようにしていきたいんです。民間企業が宇宙をより利用しやすくすることで、『宇宙産業』の発展スピードを速めたいわけです」
例えば、月に1回以上のペースで、大樹町の射場から彼らのロケットが打ち上がる。そのとき町は「宇宙港」として賑わい、様々な民間企業が「宇宙で何ができるか」を当たり前のように考える──。そんな日常を稲川氏は作り出したいと考えている。
「いまは国が主導してきた『宇宙開発』が、民間による『宇宙産業』に移り変わるまさに黎明期。これからの『宇宙産業』に必要なのは、エンジニアだけではありません。宇宙で新しい産業を興そうとする起業家やビジネスを構想する人、コンサルティング会社など、幅広い業界の人たちが『宇宙』という場所を活用していく。夢やロマンではなく、そこにある『現実としての宇宙産業』を私たちは見ています」
取材・文/稲泉連 撮影/黒石あみ
※週刊ポスト2021年12月17日号