放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、映画『浅草キッド』を観て甦った1970年代のエンターテインメントについてつづる。
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Netflix映画『浅草キッド』がやっと始まる。原作は誰でも知ってるビートたけしの若き日。監督脚本は芸界の中でも“たけしフェチ”として知られる劇団ひとり。異様なたけし愛に燃える太田光、水道橋博士、玉袋筋太郎らは嫉妬の炎がメ~ラメラだろう。エノケン・ロッパはすでに亡く、渥美清、東八郎、萩本欽一は映画テレビへと行ってしまい浅草六区は草木も生えない1970年代である。
マスコミに背を向けひとり浅草に残った孤高のコメディアン深見千三郎。そのするどいつっこみを東、萩本も深見から学んでいる。大学を中退し、ドロップアウトしたような気分でフラリと何もない浅草へやって来た若者……そう北野武である。日本中がほとんど知っているビートたけしの“人生劇場”のオープニングである。
ここからが劇団ひとりの腕のみせどころ。本当の六区のキッドと思える師・深見を大泉洋、たけしを柳楽優弥(たけし所作指導・松村邦洋とあるのが笑える)。フランス座のマドンナに門脇麦。キャスティングが見事すぎるのが相棒ビートきよしになんとナイツの土屋伸之(自然体が良く、キチンと浅草の匂いを感じさせる)。東京の“エンターテインメントよ再び”の夜明けを見てほしい。
そんな時代、映画界もすっかりさびれ斜陽化。ひと筋の光が差したのが“日活ロマンポルノ”である。我々団塊の世代はせっせと映画館へ通い出した。「日活ロマンポルノ 50周年記念」のイベントが11月27日(土)、28日(日)、池袋の新文芸坐で開かれた。そう、あの日本シリーズ、川端のヒットでヤクルトVが決まったあの試合の同時刻、いっぱいの文芸坐はロマンでポルノなひと時を過ごしていたのだ。