神尾楓珠が主演する学園ドラマ『顔だけ先生』(東海テレビ・フジテレビ系)。神尾演じる教師らしいことは一切しない“自分ファースト”の教師に注目が集まっている。これまでの作品とは違う異色の学園ドラマについて、コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
* * *
『顔だけ先生』を爽やかな美青年先生の熱血学園ドラマ、と思ったら、大きな間違い。極端でとっちらかって、頭混乱するけど、思いこみがひっくり返されて目が離せなくなる。ざっと評すると、こんな感じだ。
主人公の遠藤(神尾楓珠)は、私立菊玲学園高校の日本史非常勤講師として勤務中。自他ともに認めるイケメンだが、出勤前に川下りをしてびしょびしょでやってきたり、急にキノコ狩りをしたりと、やることが型破りで「顔は満点、授業は赤点」と言われる。先日の回では、生徒会長選挙に人気者の坂本佑太(綱啓永)と突如坊主頭になってみんなに驚かれた水原みずき(田幡妃菜)らが立候補。先生も生徒もざわつく中、遠藤が何をしているのかと思ったら、段ボールにプロペラなどをガチャガチャつけて「サンタクロース捕獲装置」を製作中だ。これだけ書くと、学園コメディの雰囲気だが、まだまだ、このドラマの底は深い。
部員が多い部から支持を集める坂本は圧倒的有利に思われたが、少数派からコツコツと声を拾う水原が健闘。てことは多数派VS少数派の対決を描くのか?と思ったが、そう単純でもないのである。水原を好きな同級生は、彼女が本当に生徒会長になりたいのかと疑問を持つ。
先生たちは先生たちで、大変だ。いつも働き過ぎで同僚から「もうちょっと自由に」「ゆったりすれば」などと言われる亀高先生(貫地谷しほり)は、遠藤に振り回されてキーキー言いつつも、どうやら遠藤のことが気になる様子。ゲイであることをカミングアウトしている早坂先生(三浦涼介)も心のモヤモヤは解消されていない。おとな世代が自分を見つめ、回復していくドラマでもあるのだ。
遠藤は、「天下獲るつもりなんで」と言う割には、さまざまな問題をつついたり、ひっかきまわしたり、「(妊娠した先生の相手が)生徒だと何がいけないんですか」と疑問を呈するが、解決策を押し付けたり、説教したりはしない。よく見ると「顔だけ」なのに、その顔が画面に出てない時間がすごく長いのである。