海洋冒険家の堀江謙一さん(83)が、来年3月から6月初旬にかけ、ヨットで「サンフランシスコ-日本」の単独太平洋無寄港横断に挑戦する。成功すれば世界最高齢での快挙となる。堀江さんは「僕自身は元気。チャンスを逃したくない」と語った。様々なジャンルを見渡していると、もはや、加齢とともに体力が衰えていくという考え方自体が、時代遅れのものなのかもしれない。
還暦後も果敢に自然の猛威に挑み続けるのは堀江さんだけではない。プロスキーヤーの三浦雄一郎さん(89)は、昨年6月に突発性頚髄硬膜外血種という大病に見舞われながらも奇跡的に復活。卒寿を迎える来年以降は、欧州最高峰のエルブルース登頂を目指し、リハビリに励む毎日だ。今年6月には富士山5合目で東京五輪の聖火ランナーも務めた。
三浦さんは60代の頃に狭心症の症状が現われ、検査を受けた病院で「余命3年」の宣告を受けた過去もあるという。日頃の運動不足、暴飲暴食から“メタボ体型”になり、「このままでは人工透析、糖尿病待ったなし」のレッドカードを突き付けられたのだ。
一念発起した三浦さんは不摂生を改めるとともに、失われた筋肉を取り戻すためのトレーニングを始めた。両足首にウエイトを装着、錘の入ったリュックサックを背負って歩く「ヘビーウォーキング」で体力を取り戻していった。85歳時点の筋肉量は、平均的な50代男性と比べて2割以上も多かったという。
堀江さんと三浦さんの超人的な体力は、アスリートとしての素地によるものだけではない。自身も「日々の筋トレを欠かさない」というイシハラクリニック院長・石原結實医師が指摘する。
「“生涯現役”の人生を送るために最も大切なのは、筋肉量を保つことです。運動で筋肉を動かすと『マイオカイン』というホルモン分泌されますが、これが減少すると糖尿病や高脂血症、心臓病、脳卒中、がんや認知症などさまざまな病気にかかりやすくなる。筋肉の7割は腰から下に集まっているので、健康体を保つには下半身の筋肉を鍛えるのがもっとも効果的なのです」
石原医師によれば、「毎日少しずつでも鍛えれば、90歳を過ぎても筋肉が発達することが科学的に証明されている」という。
「日本では、90歳を過ぎてからマスターズ陸上出場を目指した男性がトレーニングを重ね、100歳で100m走『29秒83』の世界記録(当時)を打ち立てました。この男性は108歳で天寿を全うされています」