中国四川省安悦県で1990年から2016年の26年間で、当時の「一人っ子政策」を破って、8人の子供をもった夫婦に対して、県政府は260万元(約4700万円)もの罰金を科したが、いまでは、その額が約30分の1の9万元(約160万円)に大幅に減額されていたことが明らかになった。これは、細々と農業を営んでいる夫婦に高額な罰金が払えるはずはなく、県政府と交渉して罰金の延期を続けているうちに、2015年末に一人っ子政策自体が廃止となったためだ。
これに対して、ネット上では「映画監督の張芸謀は妻との間に子供を3人作ったことで総額748万元(約1億3500万円)もの罰金を払っているのに、四川省の県政府のやり方は、あまりにもいい加減だ。そもそも一人っ子政策自体が間違っていたとして、張芸謀に罰金を返すべきだ」などとの声が出ている。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
四川省安悦県に住む50歳の男性は5人の女の子を授かった後、「男の子が欲しい」という願いを諦めきれずに、2006年と2010年に男の子をもうけた。さらに、2016年にも3人目の男の子が生まれたことで、県政府から膨大な罰金を要求された。
中国政府は人口抑制のために、1979年に一人っ子政策を導入し、夫婦は1人しか子供が持てないという法律を制定し、罰金規定も定めた。ただ、罰金については各地の地方政府が独自に決めることになっており、四川省では2人目の子供からは、年収の3倍の罰金を科すことを決めた。それが支払えない場合、遅滞金が課せられることになっていた。
このため、2019年の時点で、この夫婦の罰金は最終的に260万元まで膨れ上がった。
罰金を払わない場合は、原則的に子供たちの戸籍は認められないため、住民票を地元の行政に登録することができず、子供の学校への入学や、旅行のための列車の切符を買うことも困難になるが、この夫婦は地元民の信頼も厚かったため、なんとか子供たちの戸籍だけは認められることになった。
しかし、260万元もの罰金は大きな負担で、夫は家族を養うために、農業のほかに、道路工事などの副業などもこなさなければならなかった。その妻も「とても生活できないほど、苦しい毎日だった」と振り返っていたという。ただ、彼らの間には成長した子供たちがおり、彼らが毎月、いくらか家に入れていたことが唯一の救いだった。