2021年のF1は奇跡のような最終戦で激動のシーズンを締めくくった。このレースで「ドライバー・オブ・ザ・デイ」に選ばれたのは、引退レースとなるキミ・ライコネンだった。42歳の現役最年長ドライバーはなぜこれほどファンに愛されたのか。F1を追い続けるライター・砂田明子氏が指摘した。
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「容姿端麗」で男性ファンも多かった
レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがラスト1周で勝利をもぎ取り、チャンピオンに輝いた今年のラストレース。ファン投票による「ドライバー・オブ・ザ・デイ」にはキミ・ライコネンが選ばれた。チャンピオン争いに注目が集まる一方で、42歳の現役最年長ドライバーの引退レースを世界中の多くのファンが惜しみながら見守ったということだろう。個人的にはフェルスタッペンをこれ以上ないほど予選からアシストしたぺレスでもよかったと思うが、ファンが選んだのはライコネンだった。本当に愛されたドライバーだった。
かくいう私も、20年来のライコネンファンである。
「どうせ顔でしょ?」
私がF1ファンでライコネン推しだと表明すると、こういう反応をする人はいた。
この反応はある意味正しい。だってライコネンは美しいから。しかし、ある意味で正しくない。顔以上に、惹きつけられる理由があるからだ。ライコネンには男性ファンも多いし、今回のドライバー・オブ・ザ・デイが示すように、世界中にファンはいる。母国フィンランドでは英雄で、ライコネンの自伝(『知られざるキミ・ライコネン』)は人口550万人の国で20万部売れたという。
ライコネンの魅力の一つは、言うまでもないことだが、その速さだ。2002年にマクラーレンに移籍した時、まずその純粋な速さに魅せられて、私はライコネン推しになった。2003年には皇帝ミハエル・シューマッハを2ポイント差まで追い詰め、2005年にはチャンピオンになったフェルナンド・アロンソと並ぶ勝利数を挙げている。2007年、フェラーリへの移籍一年目で初戴冠。
17位からスタートし、ファイナルラップの1コーナーでフィジケラをアウトからオーバーテイクして勝った2005年の鈴鹿グランプリを、ライコネンのベストレースに挙げるファンは多い。現地で目撃した私からすれば、あれを見て彼の虜にならないのは難しいと思う。日本人ファンの心をがっちりと掴んだ瞬間だった。