1980年4月、それまでになかった斬新な笑いのオーディション番組『お笑いスター誕生!!』(日本テレビ系)が始まった。漫才、コント、漫談、手品、ものまね、ひとり芝居とジャンル不問のお笑い芸人たちが登場し、その芸を競い合い、とんねるず、コロッケ、ウッチャンナンチャンら多くのスターを輩出した。今では俳優として活躍するでんでんも『お笑いスタ誕』で8週連続で勝ち抜き、芸能界デビューを果たした1人。でんでんに当時の話を聞いた。
* * *
「あの番組は終わります」と告げられた時は衝撃でした。高校卒業後に渥美清さんのような喜劇役者を目指して上京したけど、芽が出る気配もない。
30歳までになんとかしなければと思い、1979年に『金曜10時!うわさのチャンネル!!』(日本テレビ系)のオーディションを受けました。放送作家の水谷龍二さんだけが丸印をつけてくれたようで、最終審査まで残ったんです。でも、一向に連絡が来ない。「緒方義博と申します。どうなりましたか」と電話すると、番組は終了すると告げられた。
もう田舎に帰るしかないと思いましたよ。まあ、その後も雀荘に入り浸っていたけど(笑)。当時、カタツムリが殻に閉じ籠もるような姿で麻雀を打つので、「緒方デンデン」と呼ばれていましたね。
次の年、『お笑いスタ誕』が始まった。ネタ見せに行くと、演出の赤尾(健一)さんが「『うわさのチャンネル』にも来てたよな?」と覚えてくれていました。誰もしないネタに挑戦しようと、「みんなハッピーかい? また女を泣かせてしまったぜ」と顔に似合わずキザに呟き、最後は自虐で落としました。当時、珍しいキャラクターだったんです。
でも、お笑い志望じゃないから、ネタが続かない。4本目以降は内緒で放送作家の方に書いてもらいました。そしたら、赤尾さんが「なんかネタらしくなってきたよ」と褒めてくれました(笑)。出場が決まった後、「芸名どうする?」と聞かれて「『緒方デンデン』でお願いします」と言うと、赤尾さんが「緒方はいらないんじゃないか。名前はひらがなの方がいいな」と。本番でネタをやり切ると、脱力感でボーッとしちゃって審査員の話が頭に入ってこない。それくらい緊張していたのかもしれません。