12月17日午前、大阪市北区の繁華街にある雑居ビルで火災が発生した。大阪市消防局によると、少なくとも20平米を焼き、火は約30分後にほぼ消し止められたが、28人が負傷し、うち27人が心肺停止の状態となった。その後、24人の死亡が確認されている。大阪府警は放火の疑いもあるとみて捜査している。出火元と見られているのは、ビルの4階部分に位置する心療内科・精神科クリニックだ。
「クリニックの患者で50~60代の男性が放火した疑いがあるとして、捜査を続けています。この男性が液体の入った袋を持ち歩いていたという情報も出ています」(大手紙記者)
火災当日は午前10時から診察を開始し、出火当時、クリニック内には20人ほどの人がいたという。同クリニックの公式サイトは現在は閲覧できない状況になっているが、取材班が入手したサイト内容によると、クリニック内部の写真も掲載されており、「受付」「待合」「診察室」「リワークルーム」「カウンセリングルーム」がある。待合にはソファーが3脚置かれているほか、ちょっとしたスペースがあるが、写真を見る限り、20人以上の人がいたとするとかなり混雑した状況だったと考えられる。
「2015年に開業した、小規模な心療内科のクリニックです。夜間でも受診できるということで重宝され、多くの患者が訪れていたからか、ネット上の口コミには『待ち時間が長い』という書き込みもありました。
もともと人気のクリニックなのに加えて、年末年始のぶんの薬をもらっておこうとする患者もいたことも考えられますから、出火当時も混雑していたのではないでしょうか」(前出・大手紙記者)
けっして広くない室内に20人以上。そんな混雑した空間に、可燃性の液体で一気に火をつけられれば逃げ場がなくなる可能性がある。そのことが多数の人的被害につながったのではないか。
放火による火災の場合、消化活動が困難になりやすい。火災科学研究所に所属する東京理科大学の水野雅之准教授がこう解説する。
「出火してすぐの段階での消火活動を“初期消火”と呼ぶのですが、『天井にまで炎がついたら、初期消火は諦めて避難すべき』と指導しています。放火の方法にもよりますが、可燃性の液体を持ち込んで放火された場合、火が一気に燃え広がるので、初期消火が著しく困難です。即避難すべき状況になります」(水野氏、以下同)
「消防法の基準では弱い部分もある」との指摘も
今回のような狭い空間で火災に巻き込まれたとき、どのように対応すべきだろうか?