今や年末の風物詩となったお笑いコンテスト番組『M-1グランプリ2021』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。毎年、高い視聴率を記録しているが、『M-1』に対抗する民放各局は今年どんな番組で勝負をかけるのか。その傾向と狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
* * *
19日夜、『M-1グランプリ2021』が放送されますが、私のもとには業界関係者やテレビ誌記者などから「今年も高視聴率は間違いないだろう」という声が聞こえてきます。
『M-1グランプリ』は、「どのコンビが勝つかわからない」「一夜で人生が変わる」というガチンコの生放送である上に、「来年のブレイク芸人をチェックする」という意味でも、日本中の人々にとって関心の高い番組。ネタの順番も笑御籤(えみくじ)で決めるほか、審査員の採点、残酷なまでに明暗が分かれるなどの臨場感から、録画機器の発達した現在でもリアルタイム視聴する人が多く、世帯視聴率は関東地区で約20%弱、関西地区で約30%弱を記録しています。
そんな12月の風物詩と言える大型特番だけに、他局のテレビマンたちにとっては脅威の存在。あらかじめ決勝の放送日は決まっているだけに、各局は『M-1グランプリ』を意識した編成にせざるを得ないのです。
今年は、TBSが『報道の日2021』、フジテレビが『これが定番!世代別ベストソング ミュージックジェネレーション』、テレビ東京が『天空の仕事人』、日本テレビが『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる相談所』の通常編成を放送。つまり、日本テレビ以外の3局が、報道、音楽、空の映像という“お笑い”とはまったく別ジャンルで勝負しているのです。
また、日本テレビも、ただ自局の人気番組を並べただけでなく、『DASH!!』が「第3回DASHデミ―賞」、『イッテQ』が「年末イッテQ!アワード」、『行列』が「日本人が好きな映画100」という特別感のある企画をそろえました。これらは『M-1グランプリ』に対抗するためでしょう。
年末特番『報道の日』を大幅に移動
なかでも、『M-1グランプリ』に対する警戒心が最も強いのはTBS。『報道の日』は昨年まで6年連続で12月30日の11時~17時30分に放送されていましたが、今年は11日も早い上に、東日本大震災を振り返る形で初めて放送された2011年以来のゴールデンタイム放送となります。
さらに先週12日、日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』の最終回が2時間3分SPで放送されました。業界内では、「最終回の放送時間を倍増し、全9話のみ、12月第2週目で終わらせたのは『M-1対策』だろう」とみられています。
事実、昨年の『危険なビーナス』も『M-1』一週前の13日で終了。さらにさかのぼると、2019年の『グランメゾン東京』は、『M-1』放送日の22日に74分拡大版で対抗したものの、前週から世帯視聴率が3.6%下がり、全話ワースト2位。2018年の『下町ロケット』も、『M-1』放送日の2日は全話ワースト視聴率。2017年の『陸王』も、『M-1』放送日の3日は前週から1.7%下がり、全話ワースト3位に終わったという苦い過去がありました。