日本政府が弱気のため、今のところアメリカ側の反応も鈍い。沖縄県は変異株のゲノム解析について検査協力を申し出たが、アメリカ側は個人情報保護を理由として、日本国内での検査機関利用を断わったという。ここでも「日米地位協定の壁」が立ちはだかっている。
「日米地位協定に関しては、これまでも米軍人の犯罪を日本国内で裁けないという問題がありましたが、今新たに新型コロナの水際対策でも一種の“治外法権”になってしまうという難題が浮上しました。本来なら日本政府として議論すべき重要課題ですが、岸田政権にその様子はありません。
それは政権内に、日米地位協定に触れるのはタブーという共通認識があるからです。民主党の鳩山由紀夫・首相は、政権奪取時に『日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む』と掲げましたが、普天間飛行場の県外移転に失敗し、政権凋落のきっかけとなりました。自民党にはそれを反面教師として、この問題には触れてはいけないという不文律があるのです。また、野党第一党である立憲民主党にも、過去のトラウマから日米地位協定には触れづらいという事情がある。
しかし新型コロナのような国家的危機に際しても、日米地位協定を理由に一切の協力が得られないような状態で果たしていいのか。岸田政権の腰が重いなら、せめて国会で与野党が議論すべきでしょう」(同前)