松野博一・官房長官は12月20日の記者会見で、沖縄県の米軍キャンプでの新型コロナウイルスのクラスターについて、同日時点で少なくとも180人の感染が確認されていると明らかにした。在日米軍から政府に連絡があったという。その多くがオミクロン株とみられており、日本政府は警戒感を強めている。
松野官房長官は、アメリカ政府に行動管理の指示を順守するよう要求したとし、「違反した場合は処分を含め厳格な措置が取られることを強く申し入れた」と述べた。だが、現時点で岸田文雄・首相はこの件についての見解を明らかにしていない。注力してきたはずのオミクロン株の感染拡大危機に、いったいなぜ黙っているのか。ベテラン政治ジャーナリストが語る。
「感染した米兵らはいずれも米軍機でアメリカ本国から嘉手納基地へ直接入国しています。岸田首相は全世界からの外国人の新規入国を停止する“鎖国政策”を主導しましたが、米軍だけは例外で、口を出すことができません。日米地位協定で旅券や査証(ビザ)に関する国内法の適用が除外されているためです。入国した米軍人は、14日間の移動制限があり、公共交通機関の利用を禁止されていますが、それも米軍内の内規に過ぎません。
これまでオミクロン株の国内感染に目を尖らせてきた岸田首相からすれば、厳しくもの申したいところでしょうが、首相は目下、バイデン米大統領と早期会談することを目標としており、この件でアメリカと事を荒立てたくない。そこで、表立った声明は出さないでいるのでしょう。今後見解を公表するとしても、当たり障りのない表現にするのではないかと見られています」