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岸田首相が安倍派パーティーで「安倍総理」と精一杯持ち上げた事情

岸田文雄・首相の思惑とは…(時事通信フォト)

岸田文雄・首相の思惑とは…(時事通信フォト)

 政界には前首相でも元首相であっても、面と向かっては「総理」と呼ぶ不文律があるが、現職総理が元首相を「安倍総理」と呼ぶのは異例だ。

 そんな珍事が起きたのは2021年12月6日に開かれた安倍派の政治資金パーティーだった。来賓として挨拶に立った岸田文雄・首相が挨拶の中でこう語ったのだ。

「先日私は英国のグラスゴーで行なわれた気候変動に関する国際会議に出席をさせていただきました。その際に多くの首脳が、安倍総理は元気にしてるかと、皆さん口々に声をかけてくださったわけです。

 そしてある首脳はですね、『シンゾーは自分の国の国政選挙で6連勝してる。選挙の秘訣を知っている。自分はその秘訣を教えてもらったんだ』という話をしていました。私はまだその秘訣を聞いてはいないんですが(会場笑)、ぜひ安倍総理には、この参議院選挙に向けても貴重なご指導をいただきたい」

 この日のパーティーは安倍氏が自民党最大派閥「清和政策研究会」(旧細田派)の会長に就任したお披露目を兼ねていた。岸田氏も挨拶の冒頭では「安倍会長」と呼んでいたが、そのくだりから「安倍総理」と呼び名が変わり、若い政治部記者たちも驚いた様子だった。

 岸田氏は安倍長期政権下で5年近く外相を務め、安倍氏を「総理」と呼んで仕えてきた。そうした長年の呼び方が思わず口を突いて出たのか、それともあえて“総理”と持ち上げたい別の思惑があったのだろうか。政治評論家・有馬晴海氏はこう読む。

「自民党には現職総理は原則として派閥のパーティーには出席しないという慣例がある。それでも岸田氏があえて出席したのは、総裁選で応援してもらった御礼でしょう。現職総理が『安倍総理』と呼んだのは違和感があるが、敬意を表したのではないか。

 岸田氏と安倍氏の間は最近あまりしっくりいっていないと見られている。岸田首相は安倍氏に近い甘利明・前幹事長が失脚すると後任に茂木敏充氏を起用し、外相に安倍氏のライバルの林芳正氏を据えるなど、ちょっとずつ安倍離れを進め、岸田色に変えつつある。

 しかし、安倍氏は最大派閥の領袖で、タカ派の強固な支持基盤もついているから、逆襲を食らうとろくなことがない。だからこそ、本人の前では『安倍総理』と精一杯持ち上げてみせた。夫が浮気をしているときに限って、奥さんに高いお土産を買って帰って機嫌を取ろうとするのと同じ心理じゃないか」

 だが、夫婦関係では、夫が珍しくお土産を買ってきたことで、逆に浮気がバレることはよくある。

 自分を「総理」と呼んだ岸田首相のお追従に、安倍氏が「こいつ怪しい」と感じないとも限らない。

※週刊ポスト2022年1月1・7日号

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