健康診断の結果表には、検査項目ごとに「基準値」が設定され、「正常」「要経過観察」「要精密検査」などの判定が記されている。それに一喜一憂する人も多いだろうが、その基準となる「健康基準値」はそこまで気にする必要がないとの意見もあるという。
たとえば、ヘモグロビン。貧血という自覚症状から気にする人も多いヘモグロビンだが、赤血球内の鉄分量を示し、貧血検査の指標となる値は、男性の場合、12.1~13g/dlで保健指導、12以下なら受診勧奨となる。長年、健康基準値を研究調査してきた東海大学名誉教授の大櫛陽一氏が、数値をどのように受け止めるのがよいのか、解説する。
「性差と年齢差が大きい検査項目で、男性では加齢に伴って徐々に低下するのは正常です。急激に下がっていた場合はがんなどの疾患の徴候かもしれません。喫煙者はヘモグロビンの5%が一酸化炭素と結合して減っているので、検査値を0.95倍して考えましょう」
尿酸値が上がると結石ができ、痛風や尿路結石の原因になる。健診の基準値は7.0mg/dlまでで、これを超えると高尿酸血症と診断される。
「基準値は問題ないですが、超えたからといって無症状なら急いで受診する必要はありません。高い状態が続くのなら、強い運動を避け、ストレスを減らすなどしてください。60歳以上の男性で8.3以上になったら病院での治療も選択肢ですが、3未満にまで下がると、多発性硬化症、認知機能低下、視神経炎などのリスクが上がるので、基準値内とはいえ、注意が必要です」(大櫛氏)
体型に関する基準のひとつである腹囲については、大櫛氏は計測法に対して疑義を唱える。
「日本ではへその位置で計るが、これは世界的に見ても日本だけで、欧米ではその少し上の肋骨と腸骨のあいだのウエストで計ります。今の日本の計測法で85cm未満という基準だと成人男性の半分がメタボにされています。
BMIと死亡率のデータを元に算出したところ、腹囲は85~95cm前後がもっとも病気の発生率や死亡率が低い」(大櫛氏)