日本の正月に欠かせないお雑煮。お雑煮といえばもちの入った汁物のことで、正月などのハレの日に食べられるものだが、実は47都道府県、さらには地域や家庭によってその中身はさまざまだ。
「代表的なレシピだけでも全国に100種類以上あり、作り方や具材の違いまで着目すると、家庭の数だけあるといってもいいでしょう」
とは、日本各地のお雑煮事情を調査している粕谷浩子さんだ。女性セブン読者を対象に実施したアンケートでも、
「お雑煮のもちは丸いと思っていたので、四角いもちを見たときはびっくりしました」(46才・兵庫県出身)
「わが家では白みそ仕立てが定番でしたが、神奈川県出身の夫に初めて作ったとき、“何これ”と言われました」(64才・大阪府出身)
など、各地方や各家庭の素材やレシピの違いに驚く声が多く寄せられた。
お雑煮の大きな違いは、もちの形とベースの味(みそかしょうゆ)だろう。
「もちの形は主に四角と丸。この分岐点は岐阜県の関ケ原付近とされています。例外もありますが、そこから東は“のしもち”を切った角もちが主流で、西は丸もちが一般的です」(粕谷さん・以下同)
室町時代、京都の公家や寺などでは、鏡もちの代わりとして丸もちをお雑煮に入れており、その風習が庶民にも広がった。一方、東のもちが四角になったのは、江戸の人口が急増したため。ついたもちを丸めていては手間と時間がかかるので、まずは「のしもち」にして一気に切り分ける、いわば大量生産方式がとられたのが起源だとされる。
江戸時代末期に東西の味が分かれた
「関西と四国の一部ではみそ仕立てが主流で、それ以外はおおむねしょうゆのすまし汁です。こうした味の違いは、江戸時代後期に習慣化されました」
紀州(現在の和歌山県・三重県南部)から下総(千葉県北部付近)の銚子にしょうゆ文化が伝わり、佐原や野田でもしょうゆの醸造業が発展。関東地方を中心に普及した。一方、京都では、江戸時代後期から宮中や公家の間で白みそが使われるようになった。田舎みそに比べて米麹を多く使う白みそはぜいたく品。これが明治時代以降、「宮中の白みそ仕立ての雑煮をわが家でも」と、西日本の庶民に広がったという。