検査をうのみにするとリスクがあるケースも(イメージ)
健康診断や人間ドックをやっと受けてきた、という声が、コロナが落ち着いてきたことで多くなってきたが、検査結果をうのみにするのはおすすめできない。過剰診断などで必要のない手術や治療を受け「不利益」を被るケースもある。
その傾向が強いのが「がん検診」だ。
厚労省の「『がん検診のあり方に関する検討会』における議論の中間整理」(令和元年度版)でも、〈がん検診の不利益は、偽陰性、偽陽性、過剰診断、偶発症等があり、それぞれ受診者が受ける可能性がある不利益の重みも異なる〉と検査のデメリットが指摘されている。
医療経済ジャーナリストの室井一辰氏によれば人間ドックのオプションに含まれることの多いPSA検査で、そうした報告が散見されるという。
「血液中の『PSA』というタンパク質の量を調べることで、前立腺がんの可能性を測定する検査です。前立腺にがんができるとPSAが増えますが、がんだけでなく前立腺肥大や前立腺炎でも数値が上がることがある。そのため『偽陽性』とされ、過剰な医療が施されるケースがたくさんあります」(室井氏)
陽性と判定されれば精密検査を受けるように言われ、その結果がんが見つかれば医師に手術を勧められる。だが、新潟大学医学部名誉教授の岡田正彦医師(内科医)は「手術を受ける際は慎重に考えることも大事です」と話す。
「前立腺がんは、ほかのがんに比べて進行が遅いのが特徴です。高齢になってから前立腺がんが見つかっても、体に実害を与えることは少なく、そのまま天寿をまっとうすることが非常に多い。
米国のある調査では、前立腺がんではない病気で亡くなった男性約1000人を解剖した結果、60歳以上の男性の約7割が前立腺にがん細胞を抱えていたという報告もあります」(岡田医師)