2021年は、「女性蔑視」が厳しく追及される騒動が続いた。五輪組織委会長だった森喜朗氏は「女性がたくさんいる理事会は時間がかかる」と発言して辞任に追い込まれ、静岡県の川勝平太知事も「学力と容姿」を結びつけた発言で大炎上した。女性蔑視は許されないが、違和感があったのが、福島県相馬市長の立谷秀清氏が連合の芳野友子会長を「美人会長」と呼んで謝罪に追い込まれた一件ではなかったか。前後の文脈を含めて批判されたとはいえ、そもそも女性を「ブス」と貶めるのではなく、「美人」と称えることの何がいけないのだろうか? ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏に、率直に質問をぶつけた──。【前後編の後編。前編は〈上野千鶴子氏に聞いた「美しい人に『美人』と言ってはいけない理由」〉】
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リタイア後の男性は家庭内での発言にも注意が必要になってくるという。
「ひとり暮らしでなければ、男は会社を退職した後も家庭とは関わり続けることになる。夫が常日頃から、よその女性を見るたびに『お、キレイなネーチャンだなぁ』とか発言したら、そのつど妻の心は削られますよ。妻は長い間、それを受忍してきたのでしょうけど、歳をとると受忍の限度がどんどん下がっていく。夫のほうが先に要介護になるケースが多いから、そうなると妻の逆襲が始まり、こっそりオムツ交換の頻度を減らされるかもしれません(笑)。家でも本音ダダ漏れはやめたほうが賢明です」(上野氏、以下同)
一方で愛想を尽かした妻が離婚を切り出すことは意外に少ないという。
「離婚時年金分割ができるようになっても妻が受け取れるマックスは2分の1なのに対し、遺族年金は夫の年金受給額の4分の3で、さらに相続では資産も居住権も保障されます。離婚しないほうがトクと『妻の座』権は法律で手厚く保護されています。ただし、これは妻の地位が上がったわけではなく、“あとちょっと我慢して夫を看取ったほうがトクだよ”と妻に思わせ、夫が“看取り保障”を得ているのだと私は解釈しています。まあ、死ぬのを待っていると、夫はなかなか死なないんですけどね(苦笑)」
リタイア後の男性にとって家庭の他に居場所となりうるのは地域社会だが、ここでも言動に気をつけないと冷遇される可能性があると続ける。
「リタイア後の男性は、家庭の外の地域社会に関わるケースもあります。男が地域社会で本音丸出し発言を繰り返したら、必ず地域の女性たちから顰蹙を買い見放されます。
会社組織とは違い、家庭や地域などの利害の伴わない集団の場合は、『美人』などと言って女性を分断するような男は排除されてしまいます」