ライフ

上野千鶴子氏、ルッキズムをやめられない男性に「地域社会で排除される」

ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏(写真/共同通信社)

ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏(写真/共同通信社)

 2021年は、「女性蔑視」が厳しく追及される騒動が続いた。五輪組織委会長だった森喜朗氏は「女性がたくさんいる理事会は時間がかかる」と発言して辞任に追い込まれ、静岡県の川勝平太知事も「学力と容姿」を結びつけた発言で大炎上した。女性蔑視は許されないが、違和感があったのが、福島県相馬市長の立谷秀清氏が連合の芳野友子会長を「美人会長」と呼んで謝罪に追い込まれた一件ではなかったか。前後の文脈を含めて批判されたとはいえ、そもそも女性を「ブス」と貶めるのではなく、「美人」と称えることの何がいけないのだろうか? ジェンダー研究で知られる東京大学名誉教授の上野千鶴子氏に、率直に質問をぶつけた──。【前後編の後編。前編は〈上野千鶴子氏に聞いた「美しい人に『美人』と言ってはいけない理由」〉】

 * * *
 リタイア後の男性は家庭内での発言にも注意が必要になってくるという。

「ひとり暮らしでなければ、男は会社を退職した後も家庭とは関わり続けることになる。夫が常日頃から、よその女性を見るたびに『お、キレイなネーチャンだなぁ』とか発言したら、そのつど妻の心は削られますよ。妻は長い間、それを受忍してきたのでしょうけど、歳をとると受忍の限度がどんどん下がっていく。夫のほうが先に要介護になるケースが多いから、そうなると妻の逆襲が始まり、こっそりオムツ交換の頻度を減らされるかもしれません(笑)。家でも本音ダダ漏れはやめたほうが賢明です」(上野氏、以下同)

 一方で愛想を尽かした妻が離婚を切り出すことは意外に少ないという。

「離婚時年金分割ができるようになっても妻が受け取れるマックスは2分の1なのに対し、遺族年金は夫の年金受給額の4分の3で、さらに相続では資産も居住権も保障されます。離婚しないほうがトクと『妻の座』権は法律で手厚く保護されています。ただし、これは妻の地位が上がったわけではなく、“あとちょっと我慢して夫を看取ったほうがトクだよ”と妻に思わせ、夫が“看取り保障”を得ているのだと私は解釈しています。まあ、死ぬのを待っていると、夫はなかなか死なないんですけどね(苦笑)」

 リタイア後の男性にとって家庭の他に居場所となりうるのは地域社会だが、ここでも言動に気をつけないと冷遇される可能性があると続ける。

「リタイア後の男性は、家庭の外の地域社会に関わるケースもあります。男が地域社会で本音丸出し発言を繰り返したら、必ず地域の女性たちから顰蹙を買い見放されます。

 会社組織とは違い、家庭や地域などの利害の伴わない集団の場合は、『美人』などと言って女性を分断するような男は排除されてしまいます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
NHKの牛田茉友アナウンサー(HPより)
千葉選挙区に続き…NHKから女性記者・アナ流出で上層部困惑 『日曜討論』牛田茉友アナが国民民主から参院選出馬の情報、“首都決戦”の隠し玉に
NEWSポストセブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(時事通信フォト)
《「心神喪失」の可能性》ファストフード中学生2人殺傷 容疑者は“野に放たれる”のか もし不起訴でも「医療観察精度の対象、入院したら18か月が標準」 弁護士が解説する“その後”
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト