今年もあとわずか。テレビでは連日、2021年を締めくくる特別番組が放送されているが、その番組にはある傾向が見て取れるという。キーワードは「一番」だ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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かつては「クリスマス以降に年末特番がはじまる」という形でしたが、徐々に放送開始時期が早くなり、現在では12月全体にわたって放送されるようになりました。今年も12月に入ってから、さまざまな年末特番が放送され、ツイッターのトレンドランキングをにぎわしています。
なかでも目立っているのは、「一番」を決めるコンセプトの年末特番。以下、12月のプライムタイムで放送された、あるいは放送予定の一番を決める年末特番を挙げてみましょう。
3日『日本一のものまね王者が今夜決定!ものまね王座決定戦』(フジテレビ系)
12日『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞2021』(フジテレビ系)
13日『女芸人No.1決定戦 THE W 2021』(日本テレビ系)
19日『M-1グランプリ2021』(ABC・テレビ朝日系)
21日『ものまねグランプリ ザ・トーナメント2021』(日本テレビ系)
23日『歌唱王~全日本歌唱力選手権~』(日本テレビ系)
25日『お笑いアカデミー賞2021』(TBS系)
26日『爆笑!明石家さんまのご長寿グランプリ2021』(TBS系)
26日『うわっ!ダマされた大賞2021年末SP』(日本テレビ系)
27日『国民5万人がガチ投票 テレビゲーム総選挙』(テレビ朝日系)
30日『第63回 輝く!日本レコード大賞』(TBS系)
また、19日の『行列のできる相談所』(日本テレビ系)が「日本人が好きな映画100」、29日の『有吉の壁 年末の壁を越えろ!3時間SP』(日本テレビ系)が「壁芸人GP2021」、30日の『アメトーーク!年末5時間半SP』(テレビ朝日系)が「アメトーーク大賞2021」などというようにレギュラー番組の中で「一番」を決める企画も放送されています。
12月特有の気分と報われる姿
特筆すべきは、お笑い、スポーツ、歌、ゲームなど、さまざまなジャンルの“一番特番”がそろっていること。さらに、コンテスト、アワード、ランキング、トーナメントなどの一番を決めるコンセプトも多彩であり、いかにさまざまなジャンルとコンセプトで放送されているかがわかるでしょう。
毎年12月は「今年の漢字」「新語・流行語大賞」「好きなアナウンサー」「ブレイク俳優」なども発表されていますが、テレビでは、よりエンタメ性の高いものが選ばれ、豪華さや緊張感を高める形の演出で放送。年に一度のビッグイベントである上に、どんな結果になるかわからないドキドキ感もあるためリアルタイムで見る人が多く、テレビ局にとっては視聴率獲得が期待できる番組となっています。
年末の“一番特番”の狙いと人気を集める理由は、主に下記の3つ。
まず1つ目は、「一年を振り返りたい」という12月特有の気分。前述した“一番特番”には視聴者が「これを見ると、もう今年はあとわずかだな」と感じるものが多く、楽しさと寂しさが共存する12月特有のムードを醸し出すことができます。また、それぞれの結果に「僕はこう思う」「私はこっちかな」などと言葉を交わしてコミュニケーションを取ることも楽しみのひとつと言えるでしょう。
2つ目は、「頑張ってきた人が報われる姿を見たい」という気持ち。先日の『M-1グランプリ』で史上最高齢チャンピオンとなった錦鯉が感動を集めたように、「年に一度ガチンコで競い合う」からこそ生まれる人間ドラマが期待されています。
「勝ち負けより自分らしさ」が重視されがちな世の中になった現在も12月は例外で、「その年の一番を決めることがカルチャーとして根付いている」と言っていいのではないでしょうか。