国内

日本対がん協会会長がステージⅣのママの笑顔に感嘆「ただごとではない」

2021年7月に娘が1歳になった

2021年7月、娘が1歳になったときの家族ショット

 2021年9月に大腸がんのため24才で亡くなった遠藤和(のどか)さんが1才の娘のために綴った日記をまとめた『ママがもうこの世界にいなくても』が大きな反響を呼んでいる。がんで妻を亡くした経験があるがん専門医で、現在は日本対がん協会会長を務める垣添忠生さんに話を聞いた。

 遠藤和さんは青森県出身。21才で大腸がんのステージⅣであると宣告を受けた。22才で、かねてから交際していた将一さんと結婚式を挙げた。その様子が『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』(日本テレビ系)の「結婚式の旅」コーナーに取り上げられ、全国の多くの人の感動を集めた。その後、まもなく妊娠して23才で娘を出産。和さんは、未来の娘に自分の姿を伝えるため、日記を書き続けていた。

 2021年5月下旬、和さんは担当医から、余命が数週間単位だという宣告を受けた。緩和ケア病棟に移ることも提案されたが、「治すための治療がしたい」と積極治療を望んでいた和さんは、訪問看護ステーションを見つけ、自宅に戻ることを決意した。和さんは前を向いていた。退院から5日目の日記には、こう綴られている。

《5月31日(月) 朝、娘にミルクをあげて、洗濯をして、掃除機もかけた。昼、テレワークで家にいた遠藤さんのために、ペペロンチーノに生卵を落としたパスタを作った。ぺぺ玉。ずっと、こういうことがしたかった。家族と同じ空間で過ごす。家事をする。娘をあやして、抱きしめる。些細なことだけど、ものすごく尊く感じる。いまの私は、腸が腫瘍で押しつぶされてしまったので、固形物は食べられない。24時間、点滴で栄養をとっている。痛みを抑えるために、麻薬を入れ続けているから、ぼんやりすることも多い。それでも、ただ生きてるだけでこんなに幸せ。一生点滴でも、車椅子でも、絶食でもいい。ずっと、家族と一緒にいたい。24年間でいまが一番しんどいけれど、一番幸せ。》(『ママがもうこの世界にいなくても』 より)

 日本対がん協会会長の垣添忠生さんは同書について、「本の表紙にある、和さんの笑顔が素晴らしいと思います」と話す。

「よく見ると腎ろうのチューブが繋がっていますから、闘病はすでに、ものすごくつらい段階にあったのだということが推察できます。これほど深刻な状況で、これだけの自然な笑顔が出るというのは、ただごとではないと思いますよ」(垣添さん、以下同)

 1941年生まれの垣添さんは、東大医学部を卒業後、都立豊島病院などを経て1975年から国立がんセンター(現・国立がん研究センター)病院で泌尿器科医となった。2002〜2007年には同センター総長を務め、2003年には上皇陛下(当時は天皇陛下)の前立腺がん手術に携わる大任を果たす。

 その一方、自身も大腸と腎臓と二度のがんを経験したがんサバイバーであり、2007年に妻の昭子さんを肺の小細胞がんで亡くした経験がある。のちに出版された、妻の死に向き合う日々を克明に記した『妻を看取る日―国立がんセンター名誉総長の喪失と再生の記録―』(新潮社刊)は大きな反響を呼んだ。

 昭子さんも、最期は自宅で過ごしたそうだ。

関連記事

トピックス

ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《水原一平の裁判資料で発覚》大谷翔平が激怒した「ギャンブルコラ画像」の販売「名声と善意を傷つけられた」検察は被告を「強欲」と糾弾
NEWSポストセブン
一連の騒動について責任を追及する声は止まず、質疑応答は10時間以上に及んだ
《フジテレビ10時間超え会見》「静かにしてください、マジで!」通販新聞・佐藤記者が現在の心境を吐露「むしろ反省しています…」と恐縮
NEWSポストセブン
協会トップの八角理事長はいまの大相撲に何を思うのか
八角理事長が初場所中に語っていた“横綱空位”への危機感 豊昇龍らに叱咤激励「本来は照ノ富士を倒して上がってきてほしかった」
週刊ポスト
改めてオープンな形で行われた“やり直し会見”
「知っていたらすぐ打ち切っていたのに…」フジ・バラエティ現場が港浩一社長の会見に“本音”を吐露《「女性を守ることを最優先に」へ社内から疑問の声》
NEWSポストセブン
送検される矢口容疑者(時事通信フォト)
《長野駅前・3人連続殺傷》「警察? 呼べるもんなら呼んでみろ!」“水も電気も止まっていた”矢口雄資容疑者(46・無職)が正月に見せていた“奇行”
NEWSポストセブン
30歳の誕生日を迎えられた佳子さま(時事通信フォト)
《姉・眞子さんが結婚した30歳に…》ご公務が増える佳子さまに「結婚に向けたラストスパートに見える」との指摘も
NEWSポストセブン
AEDをめぐって、SNSを中心に喧々囂々の議論が巻き起こっている(写真/イメージマート)
《ABEMAに疑惑》「AED人命救助したら強制わいせつで被害届」現役医師が違和感を覚えた”毛布・名刺・倒れた女性”のナゾ 広報部の回答は
NEWSポストセブン
フジテレビの社長を辞任することを発表した港浩一氏(左/時事通信フォト)
《X子さん強制参加の誕生日会》フジ・港浩一社長が語った“編成幹部A氏関与”と「楽しませていただいてありがたかった」「思いが至らなかった」
NEWSポストセブン
SNSでの誹謗中傷を許さないという思いがある美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/黒石あみ)
美智子さまの側近としてサイバー犯罪捜査のスペシャリストを招聘、SNSでの誹謗中傷も影響か 宮内庁はインスタによる広報を充実させるべく前年比10倍以上の予算計上
女性セブン
港社長、中居正広氏の
《とんねるず石橋貴明、直撃にショック隠せず》盟友・中居正広は引退、“育ての親”港社長は辞任「フジテレビを滅ぼすなよ」と歌った過去
NEWSポストセブン
渦中の被害者X子さんは港浩一社長(左)の「誕生日会」にも強制参加(時事通信フォト)
《フジテレビ問題》女性アナが参加する“港社長の誕生日会”に渦中の被害者X子さんが出席させられていた 会見時の「ないと信じている」発言に呆れる社員も
週刊ポスト
24時間利用可能で人気を博す『エニタイムフィットネス』(AFP=時事)(本人Xより)
《丸出しサンタコスで若い女性がトレーニング》24時間ジム内で過激な動画を撮影してSNSに投稿…『エニタイムフィットネス』は「強い憤りを覚えます」「然るべき対応を行っていきます」と回答
NEWSポストセブン