K-POPの枠を飛び出し、世界の音楽チャートを席巻している韓国発の男性アイドルグループBTS。韓国国内では、彼らの兵役免除を巡る議論が続いている。
「兵役免除」といっても、基礎軍事訓練とされる4週間の新兵訓練は必ず受けることになるので、全くの免除というわけではない。政府内で議論が続いているのは、国益への寄与度が高い大衆文化芸術家が芸術・体育要員として、自身の特技分野で一定時間(500時間超)の奉仕活動をすればよい「代替服務」をさせるという兵役法改正を認めるか否かという点についてだ。
BTSのファンはARMYと呼ばれるが、韓国のARMYたちはBTSの兵役について「行くなら行けばいい。私たちは待てばいい」とする声が目立つ。Twitterでは「大韓民国の男性として生まれた以上、兵役の義務を避けることができないのが現実だ。昨日、ジョングクがBTS= ARMYと言ったように、防弾が言ったことだけを私は支持します」「国が(BTSのために)やってくれることはなく、ご飯をスプーンの上に乗せるだけで、私たちの防弾(BTS)は黙々とできることをする。防弾は私たちARMYが守る。寂しくないように、悲しくないように」と、メンバーの気持ちを尊重したいという投稿が溢れている。
BTSのメンバー自身もこれまでに、インタビューなどで兵役について度々触れてきた。2020年11月にはメンバー最年長のジンが次のように話している。
「大韓民国の青年として兵役は当然の問題だと思います。いつも申し上げているように、国からの招集があればいつでも応じる。時期になって招集があるならいつでも応じる予定です。メンバーたちともよく話しますが、兵役には皆が応じる予定です」
メンバーやファンが兵役を当然の義務として受け止める発言をしているのに対して、むしろ韓国政府が煮え切らない態度に見える。韓国エンタメライター・田名部知子氏は韓国政府の立場について次のように説明する。
「韓国政府はBTSがもたらす経済効果をどうしても意識せざるを得ないのでしょう。2020年に米ビルボード100で1位となった『Dynamite』の経済効果は1兆7000億ウォン(約1660億円)という試算が出ているほど、BTSによる影響は大きい。今の人気が維持されれば、デビュー(2013年)から2023年までの10年間で経済効果は56兆ウォン(約5兆4000億円)にのぼると試算されています」
そうしたBTS人気の恩恵に与りたい一方で、韓国政府は「人口急減」という無視できない問題にも直面している。
「出生率の低下で兵役資源が不足している状況もあり、兵役の公正性は20代の男性にとって特に敏感な問題になっています。国防部も兵役法改正案の議論に関連して、慎重に検討する必要があるという立場を明らかにしている。今や世界から注目される存在となったBTSの兵役問題を中途半端に扱うことは許されず、2022年3月の大統領選挙の争点に浮上する可能性もあります」(前出・田名部氏)