2021年の日本シリーズは、ヤクルトが4勝2敗でオリックスを下し、20年ぶり6回目の日本一に輝いた。当初は“地味なカード”ともいわれていたが、全試合が2点差以内の接戦となり、一転して「名勝負」と称賛する声が大きくなった。ただ、プロの目線からすると違った見方もあるようだ。
試合経過としては、たしかにシーソーゲームが続く日本シリーズだった。第1戦は絶対的エースの山本由伸を先発に立てたオリックスが先行されて2点を追う展開となったが、9回裏に吉田正尚がサヨナラ打を放って劇的な逆転勝利を収める。第2戦はヤクルト先発の高橋奎二がプロ初完封を飾り、1勝1敗のタイに。
東京ドームに舞台を移してからはヤクルトが第3戦、第4戦と1点差で勝利して日本一に王手を掛けると、第5戦はヤクルトがリードを許していた状況から8回裏に山田哲人の3ランで同点に追いつく。流れはヤクルトに傾くかと思われたが、直後の9回表に守護神・マクガフが代打・ジョーンズに手痛い一発を浴び、オリックスが一矢報いた。
舞台を再び、ほっともっとフィールド神戸に移して行なわれた第6戦は延長12回の末にヤクルトが2-1で勝利し、ついに決着となった。2019年、2020年はいずれもソフトバンクが4連勝するという一方的な展開の日本シリーズが続いていたこともあり、手に汗握る接戦の連続を「名勝負」とする声が目立った。
ただ、そこに異を唱えるのは、辛口評論で知られる江本孟紀氏だ。本誌・週刊ポスト1月4日発売号の「2022大予言」特集では、江本氏に中畑清氏、達川光男氏を加えた3人が来季の見通しを語る座談会を掲載する。その取材のなかで、江本氏が今季の日本シリーズについてこんなふうに言及していた。
「日本シリーズはみんないい試合だったというけど、ホンマにそうかな? レベルが高かったかといわれるとね……。ランナーが3塁にいるのに外野フライ1本が打てなかったり、肝心な場面で大振りして三振とかね。ピッチャーも2戦目にシーズンで4勝しかしていない投手(ヤクルト・高橋奎二)が先発だからね。4戦目ぐらいまでは2ケタ勝っているピッチャーが出てきてほしい。
充実した戦力同士が、がっぷり四つで戦うのが日本シリーズですから。そういう観点では、やっぱり2年連続で最下位同士のチームの対戦だとも感じました。お互いに欠ける部分があったから、競った試合になったということじゃないか」