ハライチ岩井勇気が書いた『どうやら僕の日常生活はまちがっている』、マヂカルラブリー野田クリスタルによる『野田の日記』など、芸人の著作が目を引いた2021年。先日M-1グランプリで涙の優勝を果たした錦鯉の2人も、11月に『くすぶり中年の逆襲』という書籍を出している。そんななか、9月に発刊した初の著書『僕はロックなんか聴いてきた』でアバンギャルドな芸風とは違った一面を見せ好評を博しているのがお笑い芸人の永野だ。
『僕はロックなんか聴いてきた』で永野は、芸能界きっての洋楽ロックフリークぶりを遺憾なく発揮し、ニルヴァーナやセックス・ピストルズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといったバンドやミュージシャンについて思い入れたっぷりに語り散らかしている。独断と偏見にあふれてはいるがその筆致は確かな造詣に裏打ちされており、“○○愛”を熱く語るさまは、さながらテレビ朝日系『アメトーーク!』のようでもある。
昨年YouTubeチャンネルで自身の有り余る音楽愛を語るまで、永野はロックファンであることを特に表に出してこなかった。むしろ、出さないほうがいいとすら思っていたらしい。
「僕の音楽の聴き方って、気軽に親しむみたいな感じじゃなくて、頭でっかちなんですよ。音楽雑誌をたくさん読んで、興味が沸いたものを厳選して構えて聴いて、歌詞を読み込み所詮和訳なのに思想や文化をわかった気になって、パンチラインを自分の思考に取り入れて。
だから楽曲の背景を勉強もしたし、オタクみたいに知識もついたんですけど、そんなものは今の自分にはなんの意味もない、無駄なものだと思ってました。僕が音楽の話なんかしても気持ち悪いと思ってたから、適当に『ミニモニ。が好きです』とか言ってたんです。ミニモニにしたのは完全に響きですね。あやまんJAPANが好きとも言ってました(笑)」(永野、以下同)
13歳のときに聴いたU2が洋楽の原点だという永野は、1991年、17歳で出会ったニルヴァーナに衝撃を受けロックにのめり込んでいく。同書で取り上げたバンドの多くが1990年代に出会ったものであるため、当時を振り返る記述も多い。ロックバンドについて語っていると同時に、自伝的要素が大きいのも同書の特徴だ。