「若い世代」「次世代」重視は選考基準になかったか?
今回、河辺選手を選考した理由として、日本スケート連盟の竹内洋輔フィギュア強化部長は、ショート・フリーともにトリプルアクセルを決めて3位に入った「競技力」に加え、「若い世代」「次世代」「将来性」を挙げたと報道されている。
ファンの間には、病気を乗り越えてリンクに戻り、見る者の心を浄化するような安定感ある演技を見せてきた三原選手にオリンピックに行ってほしい、という声は多く、SNSなどにもそういった書き込みが多く見られていた。そんななかでの河辺選手の選出に、「若さは選考基準に書かれていないのでは?」「後出しじゃんけんでは?」と疑問の声があがっている。
「まず、選考基準を多く満たした人が選ばれるのではない、ということをスケート連盟は名言しています。そして基準を満たした選手のなかから、『総合的に判断』して選ぶと書かれているわけです。『総合的に判断』の具体的な内容は明文化されていないので、もやもやするファンはいると思いますが、今回は若さや将来性もポイントになった、ということではないでしょうか。ただ、若ければいいということではなくて、坂本選手、樋口選手という、女子フィギュアの中ではベテランの域に入ってくる2選手とのバランス、ということも考えられたのだと思います」(フィギュアスケートに詳しいライターの土田亜希子氏)
全日本でショートとフリーともにトリプルアクセルを跳んだのは河辺選手だけで、二つとも加点の付くジャンプだった。その評価も高かったと竹内強化部長は答えている。
「全日本と同時期にロシアの国内大会が開かれていましたが、優勝した15歳のワリエワ選手はじめ、上位勢は4回転を複数回跳ぶ選手ばかり。国際大会で勝つためには高難度ジャンプは必須の時代です」(土田氏)
フィギュアスケートに限らず、五輪の代表選考は様々な競技で議論を呼ぶ。透明化は重要だが、競技ごとの特性もあり、透明化だけがすべてでもないだろう。建設的な議論は意味があっても、選手へのバッシングはあってはならない。そもそも、議論を呼ぶほど実力伯仲の選手がひしめきあう状況は、競技にとって素晴らしいことだ。選ばれた選手も、今回は選ばれなかった選手も、全力で応援したい。