血液検査でコレステロール値を指摘されたことがある人は多いだろう。だが、見解は医師によってさまざまだ。東海大学名誉教授で健康診断の数値に詳しい大櫛陽一さんは「コレステロール値は下げなくていい」と語る。
「新型コロナに限らず、コレステロール値が低い人は感染症にかかりやすいのです。世界的な医学雑誌『ランセット』に掲載された新型コロナに関する報告では、小規模な調査ではありますが、新型コロナに感染した人の総コレステロール値は、そうでない人と比べて約50mg/dLも低いことが明かされている。“悪玉”と呼ばれるLDLコレステロールの値も、“善玉”であるHDLコレステロールの値も低かったのです」
感染した場合、コレステロール値は予後にも影響するという。
「同誌の報告で、血液中の総コレステロール値は感染して症状が悪化するほど下がり、回復すると上昇することもわかりました。なぜなら、炎症で壊れた細胞を修復するためにコレステロールが使われるからです。つまり、もともと総コレステロール値が高い人の方が、感染した場合に回復するための体力を持っているといえます」(大櫛さん)
コレステロールは脂質の1つであり、細胞膜やビタミンDのもとになる体に必須の栄養素だ。そのため、コレステロールが減少している状態は栄養不足を示しているとも受け取れる。
コレステロール値は、高齢になるほど明らかに減少してしまう。
「高齢になると食べ物を消化吸収する体の機能が低下し、栄養状態が悪くなりやすいためです。栄養状態が悪ければ筋肉が衰えて体力もなくなっていくし、免疫力も低下して心筋梗塞のリスクも高まります。
逆に、年を取っても動物性食品を食べている人は、コレステロール値も維持されて、栄養状態もいい。女性の方が男性よりも長生きなのは、コレステロール値が高いからだとも考えられます」(大櫛さん)
高齢になればなるほど、コレステロール値は高くすることを目指した方がいいのかもしれない。