インターネットの普及は社会とメディアの関係を変えた。評論家・呉智英氏、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏、文筆家・古谷経衡氏が語った。【全3回の第3回】
呉:テレビはまだしも、ネットの影響で新聞はもう崩れ始めていますよね。全国紙でも部数が壊滅的に減っている。
吉田調書と慰安婦問題で朝日は30万部くらい減ったといわれているが、その後もずっと減り続けている。じゃあ、購読をやめた人は産経新聞にいくかといったら、いかない。ただ減っただけ。
中川:少し東京新聞に移ったといわれています。
呉:東京新聞は“反原発”を打ち出して、左派向けのクオリティペーパーとして生き残っていますね。
古谷:左派向けのマーケティングがうまいですね。
中川:朝日はそのあたりが中途半端ですよ。
呉:新聞というのは宅配でもっているじゃないですか。おじいちゃんの代から、うちは朝日だ、読売だと購読しているが、引っ越しするとそれを機にやめてしまう。つまり、報道の内容とか在り方よりも、習慣として買っていただけなんだ。
古谷:だから、人口の流動性が低い、転入・転出の少ない地方の県では、新聞が強いんです。やはり地方紙が強い。
中川:私が住んでいる佐賀県の佐賀新聞は、田舎なのに13万部出ているんです。誰それが死んだとか、子犬が生まれたとか、そんな記事が多い。
呉:中日新聞も名古屋がそこそこ大都市でも定住者は多いから、地元ネタの地方紙として生き残っている。
古谷:ネットはローカルとの親和性が低いんですね。ネットニュースでもPVを取るためには全国区の記事ばかりになる。
呉:教え子に時事通信に入社した人がいて、モスクワ支局にいたんだけど、支局には自分一人だけで東欧まで含めて担当していたというんだよね。
中川:どこの新聞か忘れましたけど、中東やアフガンの記事をタイのバンコク支局の記者が書いていた。どんだけ担当エリアが広いんだと(笑)。ネットで情報拾って書いているんじゃないか。