シニア世代に急増中の脊柱管狭窄症は、放置していると寝たきり生活をも引き起こす。「しばらく安静にしておけば、いつか治るはず」といった甘い考えはすぐ捨て去ろう。回復に向け、素早く正しいアクションを起こすのが最善の道なのだ。脊柱管狭窄症とはどんな病気なのか、そのメカニズムをおさらいする。
神経圧迫によるしびれや痛みあり
脊柱管狭窄症はここ10年で発症者数が着実に増えており、今や400万人近く。まだ医師の診断を受けていない人も含めた推定発症者数は、すでに500万人超とも言われている。昔から存在する病気にもかかわらず、近年メジャーに躍り出てしまった理由は2つ。
2011年に診療のガイドラインが定められて以来、それまで「加齢による腰痛」などと曖昧に診断されてきた症状も、実際には脊柱管狭窄症であるかどうかを全国の医師が判断しやすくなったこと。もうひとつは、加齢にともなう骨の変型などで起きやすい病気のため、高齢者人口の増加に比例したことだ。
脊柱管は、背骨の後ろ側に位置している管状の空間。脳からの指令を手足に伝える神経や、逆に手足から得られた知覚情報を脳へと伝える神経が収まっている。神経の周囲は骨と脳脊髄液によって守られているのが正常な状態だが、背骨が変型したり、脊柱管近くを通る靱帯が厚くなったりすると、途端に脊柱管が狭くなっていく。その結果、内部の神経が圧迫され、痛みやしびれを引き起こす。
脊柱管狭窄症は神経障害であると同時に、神経圧迫による血流障害でもある。体の奥底で起こる事象に直接手は出せないが、症状によってはセルフケアで大いに改善の余地があることを知っておこう。
特徴的な症状
主な症状は、しびれと痛み。どの神経が圧迫されているかによって、症状が出る場所は尻から足裏まで様々だ。「少し休めば消えるから」と安心しているなら、それこそが脊柱管狭窄症の典型的な症状でもあるので要注意。
・脚と尻のしびれ:しびれの自覚症状は、痛みよりケアがつい遅れがち。「いつから」「どこに」を意識して把握を。
・脱力:足の指に力が入らず思い通りに動かせなくなる。歩きにくいなら、神経圧迫による脱力を疑おう。
・腰痛:腰痛を引き起こす別の病気から脊柱管狭窄症へと移行、または並行して患っている可能性も。
・脚と尻の痛み片方の半身だけに痛みが生じる場合、尻、太ももの外側、すねにかけて症状が出ることが多い。