昨年末、M-1王者となりさまざまなテレビ番組から引っ張りだことなっている錦鯉。歴代最年長王者となった2人は、「アラフィフの苦労人」というのがほかの芸人にはない強み。だが、起用タレントの若返りをはかっているテレビ業界で今後も活躍を続けられるのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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昨年12月19日に放送された『M-1グランプリ2021』(ABC・テレビ朝日系)から3週間となる1月9日(日)の夜、王者・錦鯉が3つの番組に出演します。
その番組は、ロケ特番の『笑神様は突然に…』(日本テレビ系)、ゲームバラエティ『有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)、人物密着ドキュメンタリー『情熱大陸』(MBS・TBS系)の3つ。錦鯉の2人は、『笑神様』では千鳥、蛙亭・イワクラさん、水原希子さんと文化服装学院でのロケ、『有吉ぃぃeeeee!』では「大乱闘スマッシュブラザーズ」で芸能人最強の座を賭けたバトル、『情熱大陸』では『M-1』前後2か月間の姿を披露するようです。
年末年始の特番では、他の若手芸人に混じる形が多く、M-1王者としての出演が本格化するのは、正月番組が一段落したこの3連休から。例年M-1王者は次の王者が誕生する年末までの約1年間、“最新王者”として各番組に引っ張りダコになりますが、錦鯉のケースでは、時間差で異なる顔を見せられる9日の3番組がいい追い風になっていくでしょう。
ただ、錦鯉が過去のM-1王者と異なるのは、ボケの長谷川雅紀さんが50歳、ツッコミの渡辺隆さんが43歳と、2人平均でアラフィフの世代であること。言わば、錦鯉の出演ラッシュは、大物司会者が相次いで降板するなど出演者の若返りを進めるテレビ業界の流れに、逆行する形になってしまうのです。
テレビ業界はアラフィフの錦鯉に何を期待し、どう起用していくのでしょうか。
ずん・飯尾と阿佐ヶ谷姉妹の成功
テレビ業界が出演者の若返りを加速させはじめたのは、一昨年の秋から昨年の春。その後もベテランの降板や長寿番組の終了をジワジワと進める一方で、かまいたち、マヂカルラブリー、見取り図、ニューヨーク、空気階段、蛙亭などの30代芸人や、Snow Man、なにわ男子、日向坂46などのフレッシュなアイドルの出演を増やしています。
テレビ業界が出演者の若返りを進める理由は、2020年春に行われた視聴率調査のリニューアルで、「どの層が何人見ているか?」などの詳細データが出るようになり、スポンサーの求めるコア層(13~49歳)の視聴者を獲得しなければいけなくなったから。
だからこそ気になるのは、「アラフィフであるだけでなく、加齢や老化をネタにする錦鯉がコア層の視聴者を獲得できるのか」。最新のM-1王者でも、コア層のウケが悪ければ、オファーはそれほど増えないのです。
その点で1つの参考になっているのが、ずん・飯尾和樹さんと阿佐ヶ谷姉妹の活躍。飯尾さんは53歳、阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子さんは49歳、木村美穂さんは48歳と、3人ともアラフィフですが、バラエティだけでなくドラマ出演なども含めて、コア層を含む幅広い年代からの人気を獲得しています。
この飯尾さんと阿佐ヶ谷姉妹の共通点は、「どう見てもおじさん、おばさん」「遅咲きの苦労人」「脱力感を誘われる」の3点。また、「この3点があるからこそ、好感度が高く、年齢性別不問で笑わせられる」とも言えます。
そしてこの3点は、そのまま錦鯉の2人にも一致。人々に認知されるようになってからの期間が短いため、実年齢の割に鮮度があり、「アラフィフという実年齢を超えた人気者になれる可能性を秘めている」と見られているようなのです。