国内

成長促進剤を使うアメリカ産豚肉「ダウナー」状態の豚を食肉加工する例も

アメリカの養豚場の様子(時事通信フォト)

アメリカの養豚場の様子(時事通信フォト)

 日本のお隣・台湾で「豚肉」が話題になっている。国民党政権下の2006年、「痩肉精」と呼ばれる添加物を与えられたアメリカ産の豚肉が禁輸されたが、政権交代した民進党・蔡英文総統が2021年1月にこれを撤廃。輸入を再開したものの、それを再び禁止しようという案が出されたのだ。

 痩肉精とは動物用の医薬品「ラクトパミン」のこと。いわゆる成長促進剤の一種だ。豚では北米や南米、アジアなどの26か国・地域で使用が認められている。ラクトパミンによる健康被害を不安視し、「毒豚」と呼んで輸入しないよう訴える人たちは多いという。

 台湾の国会に相当する台湾立法院では、この「毒豚」を巡って、アメリカとの関係性を重視する与党と、輸入再開に抗議する野党が激突。投票の結果は、“毒豚”再禁輸は否決されたが、51%対49%という超僅差。台湾ではいまでも“アメリカの豚肉を食べると危ない”という認識は広く共有されている。

 さて、ひるがえって日本。このラクトパミン入りの豚肉は、さして問題視することなく、平然とスーパーに陳列され、加工食品にはたっぷりと使われ、食卓にも並んでいる。

赤身の肉好きは注意が必要

 日本でも高級ハンバーガー店などを中心に、《ホルモンフリー牛肉を使用しています》などと掲げる店も見かけるようになった。肥育ホルモンや成長促進剤の有無は、日本では牛の方が注目されているようだ。食肉問題に詳しい東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんが話す。

「アメリカ産をはじめとする輸入牛肉は、肥育時にエストロゲンなど成長ホルモンが投与されています。肥育期間が短縮でき、エサ代が節約できるからです。しかし過剰なエストロゲンは乳がん細胞を増やす原因だと指摘されている。

 札幌の日本人医師の調査では、市販の米国産赤身牛肉からは国産の600倍ものエストロゲンが検出されたと報告されています。EUはホルモン投与のアメリカ産牛肉の禁輸を続けており、輸入をやめた後の7年間で乳がん死亡率がなんと45%も減った国があるとのデータがあります」

 かたや、日本では国内での成長ホルモン投与は認可されていないものの、輸入については“ザル”だ。つまり、「国産牛」や「ホルモンフリー」でない限り、成長ホルモンが残留した牛肉の可能性が高い。こうしたなか、注目されていない豚肉は盲点であり、落とし穴といえる。実は、豚肉こそ気をつけなくてはならない食材なのだ。食の安全に詳しいライターの小倉正行さんが説明する。

「アメリカ産の豚肉は精肉として直接スーパーに並ぶことは牛肉と比べて少なく、加工用に振り分けられていることが多い。たとえば味付け肉や、とんカツなどの加工食品はアメリカ産豚の場合が結構あります。アメリカ産は日本向けの豚肉の成長促進剤としてラクトパミンを使っています。心臓の神経伝達に影響を及ぼす物質で、循環器の疾患を持つ人が食べたら心停止もありえるといわれています」

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