高齢者を中心に、発症者が着実に増えている脊柱管狭窄症。脊柱管が狭くなった結果、内部の神経が圧迫され、痛みやしびれを引き起こすこの病気は高齢者にも多く、70代では10人に1人以上が発症しているといわれるほどだ。日常生活で特に気をつけるべきことは何か?
痛みは気分を左右し、気分に左右される
病は気分次第で良くも悪くもなるとの意味を持つ「病は気から」。このことわざは決して非科学的ではないことが実証され始めている。
「痛みの研究が進み、好きな音楽、香り、食べ物、運動などが痛みを明らかに抑制してくれることが判明しています」(福島県立医科大学教授の紺野愼一氏)
人は体で感じた痛みを脳に伝達する一方、脳からは痛みを抑制する物質が運ばれてくる。ところが、強いストレスや気分の落ち込みによって、脳からの痛み抑制物質が正常に放出されなくなる。とくに神経系の慢性的な痛みが続くと、その痛み自体がストレスとなり、「痛み抑制物質を抑制する」という負のスパイラルにハマってしまう。脊柱管狭窄症を発症して気分が下がっているときは、自分なりの気分転換で心の状態の改善に努めることも必要だ。
痛みとストレスのスパイラルは下記【1】~【3】の流れで進行していく
【1】しびれと痛みを自覚:症状のせいで思うように動けないのがストレス
【2】気分が下がる:脳から出るはずの痛みを抑える成分が制限
【3】しびれや痛みがより強く感じられる:症状悪化
脊柱管狭窄症の人になぜか「うつ」が多い理由
また、脊柱管狭窄症と関係が深いとされる心の病気に「うつ」がある。痛みが続き、体を思うように動かせないストレスでは、誰もが憂鬱な気分になるだろう。
人によっては「疲れやすい」「眠れない」「思考力が落ちる」「何事も楽しめない」「生きていても仕方がない」と気分が下がり、うつへと進行する可能性が示唆されている。うつでは痛みの原因がないにもかかわらず痛みを感じる症状が出ることも。万が一脊柱管狭窄症とうつを併発すると、脊柱管狭窄症の治療は成功したのに痛みは続いたまま、という事例もある。うつの場合は、まず精神科受診でうつの治療からスタートを。