2022年の正月は、約2年ぶりに帰省できたという人も多いはず。遠出できずに自宅や職場、SNS上のつながりなど、狭い人間関係ばかりが“密”になっていき、対人ストレスが募る環境が長く続いた。東京都の会社員、瀬戸英美さん(40才・仮名)が話す。
「10月末、近所に住んでいる友人と食事をした帰り道で、その友人のLINEをブロックし、電話も着信拒否にしてしまいました。罪悪感はありますが、会うたびに自慢話と職場の悪口を聞かされて辟易していましたし、話も合わない相手だと思っていたので、正直スッキリしています」
いま、瀬戸さんのように、急に人との縁を切ってしまう「人間関係リセット症候群」の人が増えているという。
縁切りのマナーは「ゆっくり」「クールに」
精神科医の樺沢紫苑さんが言う。
「SNS上でつながっている相手をブロックする人から、転職と引っ越しを繰り返す人までさまざまです。こうした人は“0か100か”の二極でしか物事を考えられない、極端な二分思考に陥っていると考えられます。本来、いやな相手なら連絡を減らして会わなければいいだけなのに、つながりがあるだけでも耐えられなくなっているのです」
樺沢さんによれば、こうした二分思考に陥り“リセット症候群”になっている人は、非常に大きなストレスを抱えており、精神疾患になる可能性が高いという。
「0か100かという極端な思考は、うつ状態になると強くなります。グレーゾーンが許せなくなり、何でも結論を急ぐようになる。生来真面目で、こうした気質を持っている場合もありますが、多くはこのコロナ禍でストレスが増え、それまではがまんできていたことに耐えられなくなっていると考えられます」(樺沢さん・以下同)
だからといって、急に連絡を絶つのは当然ながら、縁切りの作法としては正しくない。そもそも、誰かを「嫌い」と思ってから、その人との縁を切るまでには、いくつも段階があるはずだと、樺沢さんは言う。ある日突然連絡を絶つのは、よほど精神的に限界だったか、明確な悪意がなければできないことだからだ。
「心理学においては『好意の返報性』といって、人に親切にすると、自分もその人から親切にされやすいという法則があります。これは悪意にも同じことが言える。“人を呪わば穴二つ”という言葉があるとおり、相手に悪意を持って絶交したら、自分にも悪意が返ってきます。縁を切った後にどうなるか、行動を起こす前に想像してほしい」