想像したくないことではあるが、誰もがいつか“その時”を迎える。多くの人に愛された著名人は“最後の晩餐”として何を選んだのか? 1970年代に一世を風靡したキャンディーズの元メンバーで、スーちゃんの愛称で親しまれた田中好子さん(享年55)。グループ解散後は、女優として数々の映画やドラマに出演し、1989年の主演映画『黒い雨』で主演女優賞を受賞した。しかし、2011年4月に逝去。田中さんは最後のときにどんな食事をしていたのか。(※文中は敬称略)
退院後の束の間の時間、心を癒やした自宅での食事
マネージャーとして27年間を共にした丸尾由美子さんが、田中と最後にゆっくり食卓を囲んだのは、2011年2月。田中が十二指腸潰瘍を患い、3か月間の入院をした後のことだった。丸尾さんは体力が落ちていた田中を気遣い、食事を作りに自宅へ通っていた。
「3か月間、食事どころか水を飲むこともできない絶食状態の後だったので、少しでも好きなものをと思い、食べやすい小さなハンバーグを作りました。やっと退院ができて、田中もほっとした様子で食べていました」(丸尾さん)
しかし、この後すぐに、再び体調を崩して入院。病は知らぬ間に一気に進行していた。
「病室で食べたいものをたずねると、『尾瀬の山の上で食べたおにぎりが食べたい』と答えました。9か月前に仕事の特番で訪れた、尾瀬の山小屋の塩おむすびのことでした」(丸尾さん)
奇しくも田中の最後の仕事は、2011年3月7日に行われた同番組のナレーション。病院から車でスタジオに向かい、収録を行ったという。みんなが愛したスーちゃんは、最後まで女優人生を全うした。