日本列島が揺れ続けた2021年。首都直下地震や南海トラフ地震、さらには日本海溝・千島海溝での巨大地震の発生リスクが指摘されるなか、地震予測の専門家である平井道夫(地震計・電離圏解析)、内山義英(地電流予測など)、服部克巳(ULF電磁場予測など)の3氏が2022年に警戒すべきエリアを語り合った。【前後編の前編】
服部:昨年は10月に千葉県北西部地震(M5.9)が発生して、東京23区で10年ぶりに震度5強が観測されました。東北から関東にかけての日本海溝沿いで地震活動が活発化しています。昨年12月21日には、内閣府が日本海溝でM9クラスの地震が発生した際の被害想定を公表しており、それによれば死者19万9000人と算出しています。
平井:地震大国の日本では、揺れを感じ取れないほどの小さな地震が一日数百回起きていますが、昨年は大きく揺れる地震が多かった。
我々の会社では主に、地震計データと地震発生の1週間ほど前から震源域の上空にある電離層で起きる異常をVLFとLFという電波でとらえたデータなどを組み合わせて地震を予測しています。毎日分析していますが、2019~2020年頃には落ち着いていた数値の動きが、昨年は激しくなりました。
内山:東北、関東の地震が多かったのが、昨年の地震の特徴ですね。ただ東北については、東日本大震災から10年が経過し、余震がだんだん収まってきて終息段階に入っていると認識しています。
一方、気になるのは関東の群発地震が目立つこと。10月の千葉県北西部地震がM5.9だったように、規模が大型化しつつあることも懸念点です。
平井:私はここ数年は関東、東海、近畿を重点的に見るようにしていますが、なかでも特に房総半島周辺の千葉県東方沖で異常が多く観測されました。以前は茨城県沖の異常が目立ちましたが、最近は東方沖のおかしな徴候が目に見えて増えています。
服部:東日本大震災以降、どこで地震が多いかというと、関東地方だと銚子市からつくば市にかけてで、近年は千葉県の北部や西部を震源にする地震も増えています。
内山:1703年の元禄地震(推定M7.9~8.2)では房総沖から小田原までの広い範囲が大きく揺れましたが、1923年の関東大震災(推定M7.9)ではその西半分しかプレートが滑らず、外房の沖合にあるプレートが滑り残りました。万が一、滑り残ったプレートがどこかのタイミングで滑ったら、M8クラスの巨大地震が起こる可能性があります。
平井:房総半島から南に下った小笠原諸島にいたる海域、特に八丈島周辺でも、地震計などでの異常が観測されています。小笠原諸島周辺は小さな地震からM6クラスの規模の地震まで発生しているので注視すべきです。