日本列島が揺れ続けた2021年。首都直下地震や南海トラフ地震、さらには日本海溝・千島海溝での巨大地震の発生リスクが指摘されるなか、地震予測の専門家である平井道夫(地震計・電離圏解析)、内山義英(地電流予測など)、服部克巳(ULF電磁場予測など)の3氏が2022年に警戒すべきエリアを語った。【前後編の後編】
内山:多くの国民が懸念している南海トラフ地震は、今後30年以内に発生する確率は70~80%と想定されていますが、すぐにでも発生するという説は否定されつつあります。どう考えていますか。
服部:色んな地震研究者の方のデータを見ていると、ここ2、3年で起きるということはないと考えていますが、20~30年以内にはおそらく起きるでしょう。
南海トラフ地震と総称される東海・東南海・南海地震は、過去に何度も同時あるいは連動して、発生しました。そのなかでも、東海沖と高知沖は長期にわたって地震の震源がない『空白域』であり、この先地震が発生する確率が高いと言えます。
平井:我々は南海トラフ地震に備えて関西から四国も重点的に観測していますが、不気味なのが紀伊半島と四国の間の海域である紀伊水道です。
以前は、三重県の東方沖や和歌山県の南部と北部が目立っていましたが、一昨年から急に紀伊水道の数値に異常が目立つようになりました。この動きが即、南海トラフ地震につながるとは言えませんが、観測データからは紀伊水道エリアの注意信号が読み取れます。
服部:どこが発端になるかで南海トラフ地震の被害規模は大きく変わりますが、最も警戒すべきは津波です。南海トラフは陸地が近く、住民に警報が行き届く前に津波に襲われる可能性があります。実際、国は高知県黒潮町の想定津波を34.4mと見積もっているほどで、沿岸の住民は事前に十分な津波対策を練っておくことが必須です。
平井:私は1週間以内の地震を予測するので何十年も未来のことは明言できませんが、地震の歴史や統計から言えば南海トラフ地震は起きてもおかしくないのでしょう。
南海トラフと同様に関心の高い首都直下地震はどう予測しますか?
内山:元禄関東大震災から大正の関東大震災までは220年ほどの間隔がありました。だから大正の関東大震災から100年ほどの現在、M8クラスの大地震がここ数十年の間に来るとはサイクル的に考えづらいです。
服部:しかし、房総沖などの地震活動が活発になっています。2011年の東北地震以降の関東の地盤への応力(物体が外から力を受けた時、物体の内部に発生する力)のかかり方を見ると、地震が起こりやすくなる方向に働いているので、首都直下地震はいつ起きてもおかしくない状態になりつつあります。警戒しておくに越したことはないでしょう。
平井:東京23区では、昨年末の短期間に震度1~2クラスの地震が複数回発生しました。これまでにない頻度で、東京の地下で何かが起き始めているのかもしれません。
内山:首都圏の地下にはおよそ20の活断層が隠れています。私はM8クラスの地震が起きるとは考えていませんが、M7程度の一回り小さな直下地震なら、今年の春までに起きても不思議ではないと考えています。