根強いファンを持つ人物ドキュメンタリーの代名詞的な番組『情熱大陸』(MBS・TBS系)に矢沢永吉(72才)が登場することが注目を集めている。矢沢以外にも『情熱大陸』では昨秋ごろから、メジャーな人物を取り上げることが増えている。その背景とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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16日の『情熱大陸』でフィーチャーされるのは、何と矢沢永吉さん。言わずと知れた日本音楽界きっての大物アーティストであり、特別な放送回であることは間違いないでしょう。
しかし、実は昨年11月からの2か月あまり、広瀬すずさん(2週連続)、柄本明さん、サッカー元日本代表・大久保嘉人さん、YOASOBI、和田アキ子さん、フィギュアスケート・坂本花織さん、錦鯉が立て続けに出演するなど、誰もがその名前を知るメジャーな人選が続いていました。
これまで1998年4月から1185回にわたって放送された『情熱大陸』は、さまざまな分野で活躍する人物にバランスよくスポットを当ててきたため、むしろ知名度の低い人のほうが多数派。知られざるヒーローやスペシャリストの出演が過半数を占め、メジャーな人は月に1回程度の出演に過ぎませんでした。
放送1200回の節目が間近に迫ってきた今、なぜ『情熱大陸』は、これほどのメジャー路線に舵を切っているのでしょうか。
アニメ『鬼滅の刃』新作がスタート
真っ先に挙げられるのは、アニメ『鬼滅の刃』(フジテレビ系)の影響。昨秋の10月、フジテレビが日曜23時15分から『無限列車編』をスタートし、そのまま新作の『遊郭編』を放送しています。『鬼滅の刃』はすぐに時間帯トップの視聴率を叩き出すなど、他局にとっては大きな脅威。一方、『情熱大陸』は民放主要4局で最下位に甘んじることもあり、何かしらの手を打つ必要性に迫られていました。
ちなみに民放主要4局の裏番組は、日本テレビが日曜ドラマ、テレビ朝日が『関ジャム完全燃SHOW』、フジテレビが『Mr.サンデー』『鬼滅の刃』と、熱心なファンを持つ各ジャンルのコンテンツが勢ぞろい。知名度では『情熱大陸』がトップでも、厳しい戦いを強いられているのです。
実際、『情熱大陸』の視聴率は、昨年4月あたりまで個人2%台後半・世帯5%前後をキープしていましたが、5月以降下がりはじめ、10月までは個人1%台・世帯3%台に落ち込むこともありました。
しかし、メジャー路線に切り替えた11月以降は、以前の個人2%台後半・世帯5%前後を記録することが増え、最新放送の今年1月9日も個人2.9%・世帯5.5%を記録しました。短期的な結果ではあるものの、メジャー路線は着実に結果を出しているようです。
次にふれておかなければいけないのは、コロナ禍の影響。感染予防の観点から『情熱大陸』に限らず、人物密着系のドキュメンタリーは撮影が困難になりました。特に一般人への撮影が難しくなる一方で、短期間の密着で撮れ高が見込めるタレントやアスリートが優先されるのは当然かもしれません。