年明けからコロナの感染第6波が急拡大し、その対応に失敗すれば発足3か月の岸田政権の基盤は大きく揺らぎかねない。今年7月には参院選も控えており、政治の先行きは一寸先は闇だ。
そんな不安定な政界でポスト岸田の最有力候補に急浮上しているのが林芳正・外相だ。本誌・週刊ポスト2022年1月1・7日号の「ポスト岸田に推せる政治家ランキング」では茂木敏充・自民党幹事長に僅差の2位、月刊文藝春秋(2月号)の「次の総理候補ランキング」ではトップと、政治評論家や記者のアンケートで高い評価を受けている。
初仕事となった昨年12月の英国リバプールでのG7外相会議では、夕食会会場の「ビートルズ・ストーリー博物館」で各国外相を前にジョン・レノンの「イマジン」をピアノの弾き語りで歌い、鮮烈な外交デビューを果たした。
1961年生まれの60歳ですでに大臣経験6回と政治キャリアは折り紙付き。岸田派(宏池会)ナンバーツーで「岸田政権の参謀総長」的存在と見られている。これまで国民の知名度は高くなかったが、昨年の総選挙で参院議員から衆院山口3区に鞍替えし、二階派大幹部の河村建夫氏と激しい公認争いを演じたことで俄然注目され、今や国会のひな壇では岸田首相の「隣」に座る。
いったいどんな人物なのか。下関市でバス会社やガス会社を経営する山口県の名門・林家の4世議員。父・義郎氏は通産官僚から国政に転じて宮沢喜一内閣の大蔵大臣を務めた大物議員で、林氏は東大法学部を卒業後、官僚の道を選ばずに三井物産から家業のバス会社を経てハーバード大学ケネディスクールに留学。民主党下院議員、共和党上院議員のスタッフを務め、米国の民主、共和両党に人脈を広げた。
過去のインタビューでは、「政界に入る前に、日米の協力関係に精通した人材になることを目指した」と語っている。
政策通として知られる一方、同僚議員だった山本一太・群馬県知事らと議員バンド「Gi!nz(ギインズ)」を結成してCDも2枚出している。ビートルズの弾き語りは十八番でもある。ギインズのメンバーだった石崎岳・元自民党代議士が語る。
「林さんがバンドリーダーでオリジナル曲はすべて彼が作っていました。音楽で若い世代を惹きつけようともしてましたね。政策に強く、新しい金融とか、デジタル化についても早い時期から注目して議論していた。マルチな才能の持ち主。人柄はソフトだが、優柔不断でないのは今回の参院からの鞍替えの決断を見れば分かる通りです」